「田中孝太 展  唐津アドレナリン」終了しました

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田中孝太 展  唐津アドレナリン」は本日終了しました。ご来店頂きました皆様に厚く御礼申し上げます。

うつわを見始めた頃には、唐津を始めとする古典的な窯業地の焼き物には興味がありませんでした。茶陶や懐石の器を据えた場に出掛けることもありませんでした。様式に頼った焼き物は、伝統の名を借りた土産物に見え、まるでブランドロゴ入りの財布を有り難がるような印象を持っていました。これは茶陶に限らず民芸の再生品も同様でした。排他的な村社会の中で語られる特殊な世界であって、今の時代に意味を成さないのではないかと。

いわゆる生活工芸と呼ばれる暮らしに向けた器が1990年から2000年代に開花し、産地や様式に縛られない作り手が一斉に増えた頃だったと思います。それは今の暮らしの中で輝きを持つ新たなうつわでした。クラフトと呼ばれた食器が洗練され、生活者目線で誰もが垣根なく参加できる開かれた世界でした。無国籍、思想や観念の消去、音楽や衣服、そして食と繋がる暮らしと並列な存在でした。意識しようとしまいと、それは昭和から続く桃山陶至上主義に対する緩やかな階級闘争(とういうか不介入)でもあったと思います。

今、うつわブームと聞きます。行列のうつわ作家という切り口で雑誌の特集が組まれる程、裾野が広がっています。時代の開拓者がいて、その後に続く作り手が登場し、やがてSNSを始めとするメディアがそれを拡散した。旧来価値との相対に位置していたものが、いつの間にか流行になって消費されていく現実。ファストファッション化する暮らしの器。かつての感動は無くなった。売れ筋の流行を安易に上書きしている事実も否めません。

あらためて古典の意味を気付かせてくれたのが、唐津や有田でした。その移行期におこった日本の食器革命を知ることで、今に繋がる器との接点が見えてきました。生活に向けた今のうつわにも原点があり、その系譜の上にある。生活工芸が歴史と断絶されたかに見えても、実は連続性のうえに成り立っている。あらためてその骨格を意識することも大切ではないかと。自由の名のもとに骨抜きになることなく、技術的、様式的な拠り所のある確かさと厳しさ。それに頼り、また疑いながら生み出される現代的なうつわ。

これを感じたのは唐津や有田にいる作り手の新たな動きです。唐津は昭和初期の古唐津再生から復古し、それ続く個人作家の登場、田中さんの師匠でもあった中川自然坊さん、川上清美さんなどの新世代、そして材料の原点回帰に影響を受けた第四世代の時代を迎えています。固定化された唐津の考えを超えようと、古典の再解釈がおこっています。

焼き物保守王国である唐津はじめ、きっと美濃、備前でも同様の動きがあるでしょう。さらに産地に捕らわれずに、焼き物の在り方自体の原理に立ち返る作り手も全国に表れはじめています。伝統は更新されることで意味を保ち続けます。一方の新種の工芸にも骨格となる思想や技術の検証が必要です。古典と現代。まだ未定義な、この混じり合うフロントが面白いと思います。

田中さんは決して全てが自在な訳ではない。唐津の枠組みの上にいる。しかしその約束事を踏まえて、身体的自由であろうとする唐津、そこに可能性を感じるのです。産地側から見た変化、産地から解放された側の変化、何故そうなるのか時代に照らし合わせてその意味を考えたいと思っています。

お持ち帰り頂きました田中孝太さんの器が皆様のお暮らしを豊かにしますことを心より願っております。新人作家の器を、曇りのない眼でお選び頂けましたこと、嬉しく思います。これからも田中さんの活躍にご注目ください。この度はありがとうございました。


これからの営業案内

うつわノート(埼玉県川越市小仙波町1-7-6)
11/12(月)~11/16(金) 搬出・設営休み
11/17(土)~11/25(日) 中野知昭 漆器展
11/26(月)~11/30(金) 搬出・設営休み
12/1(土)~12/9(日) 森岡成好 展

川越店の営業カレンダーはこちら


# by sora_hikari | 2018-11-11 18:09 | 田中孝太 展

「田中孝太 展  唐津アドレナリン」8日目

田中孝太 展  唐津アドレナリン」の8日目。会期は明日11月11日(日曜)までとなります。最終日は時間を繰り上げて17時で終了させて頂きます。

写真は佐賀県唐津市相知町にある田中孝太さんの工房の様子です。

普通大学卒業後に有田窯業大学に入り、そして韓国・金栄吉さんの元で1年半の修業、さらに唐津の故・中川自然坊さんの最後の弟子として修業を重ねました。そのまま唐津に棲みつき、2012年に独立、現在に至ります。

若手といっても34歳。独立から6年経ちますが、その割に個展回数はわずかしかありません。納得のいくものが出来きるまで易々と受けなかったことも大きいでしょう。

通常は耐火煉瓦を用いる薪窯が多い中、周りの反対を余所目に、粘土で作った古い韓国式の薪窯は、案の定、何度焼いても失敗の連続でした。しかし改良を重ねた結果、変則的な火が流れる窯から生れる器の面白さなど、回り道をすることで得られる糧を信じています。

今は学校を出てすぐに作家活動に入る人も多い中、田中さんのように自分の引出しを増やし、弓を引いてから世に出ることが、結果的に長く続けていく上で大切なように思います。

ご自身の焼き物づくりについてこんな言葉を送ってくれました。

「いやらしくない物を作りたいと思っています。例えば土を荒くしているのも、土の荒さからくるロクロの乱れが出ればとの思い。自分で、ここを崩そうと思い、それを形にしたら必ずいやらしさが出ると思います。そのいやらしさが出ない様に、キメた焼き物も作っていません。ロクロで言うと口周りでピシッとまとめたり、うまい具合にひねた形なのにきまってる。まだ私の段階でまとめる時期ではないと思っています。自然にぴたっとおさまる時期がいつかあるのではと思っています。」

巧くまとめ過ぎず、土の自然性とご自身の身体性を活かした焼き物が魅力です。34歳にして男の子3人の父親でもあります。胆力のある唐津の作り手なのです。

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田中孝太 展  唐津アドレナリン
2018年11月3日(土)~11日(月) 会期中無休
営業時間 11時~18時 
ギャラリーうつわノート(埼玉県川越市小仙波町1-7-6)地図
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田中孝太プロフィール
1984年 山口県生まれ
2009年 有田窯業大学校卒業
2009年 韓国 金栄吉氏に師事
2010年 唐津 中川自然坊氏に師事
2012年 唐津にて独立


# by sora_hikari | 2018-11-10 17:03 | 田中孝太 展

「田中孝太 展  唐津アドレナリン」7日目

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田中孝太 展  唐津アドレナリン」の7日目。

素朴で愛らしい顔立ちの焼締めの狛犬。幅20×高さ28×奥行35cmの存在感のある大きさです。田中さんによって戯画された狛犬に見えますが、桃山期に作られた肥前狛犬といって佐賀県などに分布する実在のものを本歌にしています。田中さんは狛犬研究会に所属されていて、民俗学的な見地からも興味を持っているようです。地元の土着文化から咀嚼された狛犬の姿。それは田中さんが唐津を解釈するうえで、ひとつの方向性を示しているかもしれません。個展にこれが加わることで、意味が変わります。唐津様式だけでなく、その根っこに繋がるもの。唐津に何を求めるか。素朴、土着、民俗。田中さんの意識を垣間見る気がします。


田中孝太 展  唐津アドレナリン
2018年11月3日(土)~11日(月) 会期中無休
営業時間 11時~18時 
ギャラリーうつわノート(埼玉県川越市小仙波町1-7-6)地図
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田中孝太プロフィール
1984年 山口県生まれ
2009年 有田窯業大学校卒業
2009年 韓国 金栄吉氏に師事
2010年 唐津 中川自然坊氏に師事
2012年 唐津にて独立


# by sora_hikari | 2018-11-09 17:20 | 田中孝太 展

「田中孝太 展  唐津アドレナリン」6日目

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田中孝太 展  唐津アドレナリン」の6日目。

藁を叩く槌の形をした野趣に富む花入れ。高さ23cm。これも鉄釉に藁灰を掛け合わせた朝鮮唐津です。一般的に唐津は他の産地比べて焼成時間が短く、内側から味を引き出すように綺麗に焼きあげる場合が多いですが、この花入れは荒々しく窯変し、一般的な唐津のセオリーから逸脱しているように見えます。しかし強い焼きながら、農具のような朴訥とした姿がそれを抑制しており、両極が同居したところが魅力です。田中さんらしい一品。唐津に在りながら、約束事に納まらない意欲を感じます。


田中孝太 展  唐津アドレナリン
2018年11月3日(土)~11日(月) 会期中無休
営業時間 11時~18時 
ギャラリーうつわノート(埼玉県川越市小仙波町1-7-6)地図
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田中孝太プロフィール
1984年 山口県生まれ
2009年 有田窯業大学校卒業
2009年 韓国 金栄吉氏に師事
2010年 唐津 中川自然坊氏に師事
2012年 唐津にて独立


# by sora_hikari | 2018-11-08 17:17 | 田中孝太 展

「田中孝太 展  唐津アドレナリン」5日目

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田中孝太 展  唐津アドレナリン」の5日目。

掻き落し七寸鉢。白化粧を削って(掻き落して)模様を浮かびあがらせます。李朝にありますが、さらに古くは中国・磁州窯に繋がります。田中さんのそれは巧さよりも、血流を感じる力強さが魅力。今展アドレナリンを名乗るのは、全般に通じるこの勢いから来ています。


田中孝太 展  唐津アドレナリン
2018年11月3日(土)~11日(月) 会期中無休
営業時間 11時~18時 
ギャラリーうつわノート(埼玉県川越市小仙波町1-7-6)地図
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田中孝太プロフィール
1984年 山口県生まれ
2009年 有田窯業大学校卒業
2009年 韓国 金栄吉氏に師事
2010年 唐津 中川自然坊氏に師事
2012年 唐津にて独立


# by sora_hikari | 2018-11-07 19:35 | 田中孝太 展