竹下鹿丸さんの焼〆碗

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2008年8月

益子の竹下鹿丸さんの焼締めのご飯茶碗です。地元で掘った土を単味で使っているそうです。少し砂けが多く扱い易い土ではないそうですが、窖窯(あながま)で1週間かけてじっくり焼き貫いているそうです。水に浸し、ご飯を盛り、それを繰り返すことで、よりしっとりとした肌合いに馴染んできそうな器です。ご両親も陶芸家とのことですが、代々からの益子の窯元ということではなく、脱サラをして益子に移り住まわれたそうです。小さい頃から焼きものを作る環境で育ちながら、伝統の継承や革新といった呪縛はないようで、土に火に形づくりに、素直な気持ちで向い、普通のものを作りたいという姿勢のようです。30代になったばかりですが、そんな気負いのなさが、器にも表れて優しい表情をしているように思います。

# by sora_hikari | 2008-09-06 00:50 | 竹下鹿丸さん

関昌生さんのワイヤーオブジェ

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神宮前 Untidy 2008年8月

福岡県吉井町で四月の魚というお店を営まれている関昌生さんの作った針金細工のオブジェです。上の写真の作品は、ボウル状の形に細い針金を編んだものです。直径は30センチ程あり、見た目の軽やかさに比して、壁などに掛けるとそれが映し出す影が美しい存在を示します。下の写真のものは、細い三角錐に針金を巻きつけて、先端部にプロペラの羽のようなものが付いています。どこか遠くにある鉄塔のようにも見えますし、盆栽のようなミニチュアワールドに入った気分になります。どちらも不思議な形をした造形物です。関さんの作るワイヤーは、しおりやカード立てなどの実用的なものや、具象的な街の風景を切り取ったようなものもあり、そちれらも魅力的ですが、このような用途を持たない不思議な空気を伝える作品は、その存在自体が意味を成しているように思います。ワイヤーのラインが細くはかないのだけれど、お互いが繋がったり巻かれたりした形から生まれる存在は、空間を取り込んだ彫刻のように感じられます。

# by sora_hikari | 2008-09-05 01:24 | 関昌生さん

朴英淑の白磁展

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虎ノ門にある菊池寛実記念 智美術館で開催されている朴英淑(パク・ヨンスク)さんの白磁展へ行ってきました。朴さんは60歳になる韓国の女性陶芸家。70~80年代には素朴な粉青の陶器を、90年代半ばから洗練された白磁の器を作っていらっしゃいます。この企画展では、月壺(げっこ)と言われる18世紀半ばの朝鮮王朝時代に作られた白磁壺を再現した展示が中心になっています。形は日本民藝館などで見られる李朝期の大壺に似ていますが、侘びた風情と違い、仕上がりの硬い土と純白の釉薬は、どこまでも清らかで、この「月壺」という壺を大きく象徴しています。純白の土を1350度の高温で還元焼成した白色は、不純物を全て焼き尽くしたかのような純粋さがあります。壺は大きなもので高さ60センチを超える迫力のあるサイズです。成型上、上部と下部を分けて作り、それを合わせて1つの壺の形にしているため、焼成時にその繋ぎのところが少し垂れていて、自然の重力が生み出すその歪みが微妙なシルエットと影を作り、美しい姿を見せています。白の清らかさと静けさ。まろみの形に包み込まれた空間。この美術館特有の照明効果もあって、暗がりと浮き立つ白のコントラストが幽玄の美を見せています。朴さんは、青の簡略文様を施した白磁の食器を主に作っていますが、50歳の頃から白磁の大壺も作る決心をし、研究の傍ら5~6年が過ぎ、2001年にようやく焼成にこぎつけるも、上下の合わせがうまくいかず御苦労されたようです。しかし、その合わせのずれこそが、他人同士が出会い理解し合う様にも感じられ、60歳を迎えてようやく耳順という道理を得たとのことです。この白磁壺の他に、朴さんの白磁皿に李禹煥(リー・ウーファン)さんがコバルトや辰砂を筆の軽やかなタッチで絵付けしたものや、朴さんのコバルト模様をアクセントにした白磁の食器も並んでいます。さらに白磁壺に合わせた川瀬敏郎さんのインスタレーションも見ものでしょう。明治・大正・昭和にかけて石炭と投資で財を成した菊池寛実の娘である菊池智さんの名を持つ美術館。ホテルオークラやスウェーデン、アメリカ大使館などが隣接する一種独特の雰囲気の漂う地域で見る「白」の世界は、普段目にしている器の世界とはまた違った感覚を呼び起こす体験になりました。


朴英淑の白磁
-月壺と李禹煥の絵皿-
2008年7月12日-9月15日 ※月曜休館(9月15日祝は開館)
11:00-18:00(入館は17:30まで)
観覧料:一般1300円
菊池寛実記念 智美術館(東京虎ノ門) ※HP

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# by sora_hikari | 2008-08-23 00:48 | 見て歩き

竹下鹿丸さんの個展

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六本木のサボアヴィーブルさんで開催されている竹下鹿丸さんの個展へ行ってきました。竹下さんは益子で作られています。益子で掘った土を使い、窖窯(あながま)で1週間をかけて焼成されているそうです。薪の炎をくぐった焼き締めの器はどれも良い色合いで、鉄分を含む赤い南蛮焼きのような赤色も、薪から出た灰を被った肌合いも美しい表情をしています。形もシンプルで、薪焼成の一種のくどさが抜けたさっぱりとした素直な器です。また一部、ガス窯で焼かれた織部釉の器も深みのある良い色をしています。この個展の案内にあった説明では、ご両親ともに陶芸家であり、育った環境に自然とやきものが存在していたようですが、特に気負いなく「誰もやったことがないことをやろうなんて、思ったことがない」という言葉がとても印象的です。その言葉の姿勢を表すように、素直に土と焼成に向かうことで生まれた器。そんなストレートさが気持ち良く伝わってくる個展でした。毎年、益子の陶器市に出展されているようなので、また機会があればお訪ねしてみたいなと思います。


竹下鹿丸 展
2008年8月21日(木)-28日(木)
11:00-19:00 (最終日17:00まで)
サボア・ヴィーブル(六本木) ※HP

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# by sora_hikari | 2008-08-22 22:56 | 竹下鹿丸さん

澄敬一の仕事展

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目黒のCLASKA2階にあるギャラリー&ショップDO(ドー)で開催されている澄敬一(すみけいいち)さんの展示会へ行ってきました。澄さんは、かつてpush me pull youというお店を運営され、現在は店舗内装や作品づくりをされているそうです。澄さんやpetit culの松澤紀美子さんが、現在の古道具への眼の向け方へ影響を与えたことについては、間接的に本や人伝てに聞いたことはあるのですが、安易に消費されることへの嫌悪からか、あまり表に出てこられないために実際の制作物も目にしたことがありませんでした。今回のように多くの作品に触れられる展示会は貴重な機会です。この展示会のメインは、鳩時計。乾いた木で構成され文字も針もない箱。鳩時計を分解してその機能だけを箱の中に収めたもの。時を告げる時だけ鳩が扉から顔を出します。この箱が空間に円を囲むように天井からいくつも吊るされています。そのシンプルな有り様は、情報過多になっている生活に対して、不要なものをそぎ落とし、敢えて純粋な部分だけを刹那に表すことで改めて「ものの存在の意味」が問われているようにも思いました。この鳩時計以外にも、昨年出版された「1×1=2」の本に掲載された作品をはじめ、たくさんの物が置かれています。海で洗われた木、乾いた無垢材、使い込まれた布、むきだされた機械。素材の持つ力や道具の芯にある‘機能’の美しさへ目を向けながら、それの周りを、剥ぎ取り、継ぎ足し、組み合わせる。そして再構成された新たな存在感。形は違うけれど共通した清らかさのある澄さんの作りだす独自の世界です。今やジャンク品を繋ぎ合わせた道具を見ることがあるけれど、その原点となる世界を作られたと聞きます。古いものを耽美的に鑑賞するだけではなく能動的に手を加えることでそれの持つ美しさを再認識させてくれるように思います。道具なのかアートなのか。澄さんの作られたものを、どう解釈するのかはいろいろな視点があるのだろうと思います。きっとそういう意味を前提には作っていないと思うけれど、結果的に生み出された「もの」の背景から見えてくるいまの時代感が「何か」を象徴している気がしました。


「澄敬一の仕事」展 -鳩時計-
2008年8月7日(木)-9月7日(日) ※HP
11:00-19:00
CLASKA 2F Gallery & Shop "DO"
目黒区中央町1-3-18(最寄:東横線 学芸大駅 徒歩10分) ※ストリートビュー

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※昨年末に出版された澄さんと松澤さんのお仕事が紹介された本です
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1×1=2 二人の仕事
ラトルズ (2007年11月出版)  ※amazon


# by sora_hikari | 2008-08-12 00:40 | 澄敬一さん