2026年 04月 10日
「中根嶺展 Ren’s Method」7日目








「中根 嶺 展 Ren’s Method」の7日目。
本日ご紹介するのは、哲学の道にほど近い京都市左京区浄土寺に構える中根嶺さんの工房です。古い町屋を自らの手で改装したその空間は制作の場でありながら、ギャラリーやカフェとしても成立し得るほどに整えられています。静謐で均整の取れた佇まいは、そのまま中根さんの造形の源泉を示しているかのようです。
今回の副題を「Ren’s Method(レンさんの手法)」としたのは、この工房を訪ねた体験に由来しています。作家自身が空間を構え、作品を提示し、発信していく──SNS時代においては、従来のギャラリーの役割は相対化され、表現は次第に自己完結していく。その一連の流れを貫く、自己意識に裏打ちされた体系的な手法。その実践を目の当たりにしたことが、このテーマへと結びつきました。
とはいえ、中根さんと実際に言葉を交わすとロジカルな思考ばかりではありません。むしろ身体感覚に根ざした行動原理と、アナログな経験の積み重ねが、現在の制作をかたちづくっていることが伝わってきます。
現在の制作は主に受注生産が中心とのことですが、本展ではあえてそれを離れ、店内に並ぶ作品のみを売り切りとしました。要望に応じて一点一点丁寧に制作する姿勢には作り手としての誠実さがにじみますが、同時に、過去の仕事の反復に時間を費やし、新たな表現に踏み出しにくくなる側面もあるはずです。自己を更新し、作品を上書きし続けること──それもまた創作において欠かせない営みでしょう。
今回出品された「椅子」は、まさにその意思を体現する存在です。薬缶やランプのように評価の定まった仕事ではなく、いまだ評価にさらされていない領域へと踏み出すこと。慣れ親しんだフィールドを離れ、認知の少ない場で、純粋に「モノ」としての魅力を問うこと。その試みこそが、本展の核にあるのかもしれません。
会期は明日(4/11)までとなりました。展示品は残りわずかですが、なかでも椅子は、ぜひ実際に腰掛けて体感していただきたいと思います。皆様のご来店を心よりお待ちしております。
中根嶺展 Ren’s Method
2026年4月4日(土)~11日(土)
営業時間 11時~18時 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート 埼玉県川越市小仙波町1-7-6
経歴
1989年 滋賀県生まれ
2008年 京都市立銅駝美術工芸高等学校卒業
2009年 東京でジュエリーデザイン・製作
2014年 京都市にて鍛金作家として独立
2026年 現在、同地にて制作
解説
父は焼き物、母は染織。幼い頃からものづくりに囲まれて育った中根 嶺(なかね・れん)さんは、美術系工芸高校で彫刻を学んだ後、東京で金工の仕事に出会い、ブライダルジュエリーの制作を通して素材と技術への理解を深めました。2014年に京都市で独立し、現在は哲学の道に程近い築100年の建物を改装し、工房兼ギャラリーを構えています。そこには自作の作品が静かに並び、その魅力はもとより、空間全体に行き届いた美意識の高さにも目を見張ります。現在は鍛金の技法を用い、薬缶やドリップポット、鍋、容器、カトラリー、照明器具など、暮らしに寄り添う道具を中心に制作しています。基本は受注生産とし、使い手の要望に応じて細やかにかたちを調整する姿勢も大きな特徴です。金属という硬質な素材に、手仕事ならではの揺らぎと温もりを宿すこと。作品に残る鎚目の表情からは、人の手が介在した確かな気配が伝わります。古いものに惹かれる理由を「時間と手の痕跡」に見出すその眼差しは、自然物にも通じる有機的な造形感覚となって作品に表れています。過度な自己主張に傾くのではなく、使い易さと佇まい、個性と余白のバランスを探り続ける姿勢には、手でつくる意味への静かな問いが通底しています。デザイナーであり、職人であり、作家であり、発信者でもある。多面的な役割を担いながら自らの価値と向き合うその姿は、SNS時代における新しい作家像の一つともいえるでしょう。本展では、銅のやわらかな光をたたえた作品の魅力とともに、時代を生きる作り手の思考と実践となる「Ren’s Method」をご紹介いたします。洗練されたフォルムのなかに刻まれた鎚目が語りかける、中根嶺さんの手の温もりを、ぜひ会場で感じ取ってください。店主


# by sora_hikari | 2026-04-10 18:00 | 中根嶺展






















