2009年 03月 03日
安藤雅信さんの彫刻展 @ ギャルリー・ワッツ
南青山のギャルリー・ワッツで開催されている安藤雅信さんの個展へ行ってきました。安藤さんといえば、オランダ皿(☆)を代表とする器作家であったり、多治見の百草(☆)の主宰であったり、メディアにもよく登場される著名な方ですが、元々は現代美術家として作品づくりをされていたそうです。今回の展示は、陶土で作った「彫刻」展です。ギャラリー中央には、立方体の塊と欠片が並び、壁面には陶板が掛けられています。中央の展示は、いくつもの立方体が両端に整列し、それに挟まれるように欠片が敷かれています。フラットな表面の立方体や欠片が集積した立方体、そしてそれがバラバラに分解したような欠片。集まって固まり、凝縮して飛散し、そしてそれを繰り返す、物質の輪廻。まるで惑星の誕生~崩壊~再生の大きな流れを抽象化しているように感じます。個々の作品の表面はスクラッチされたり、鉄がドットのように浮き出したり、実験的なさまざまな表現がされています。この個展のサブタイトルにある「結界(けっかい)」とは、聖なる領域と俗世間を分離する境界のようなものらしいのですが、この展示は、いわば人の意識の仕切りなのかもしれません。茶道の世界でもハレとケを分ける仕切りを「結界」というそうです。赤木明登さんの本(☆)の安藤さんの章で、「安藤作品はいわば神社の鳥居のような神聖な空間を通り抜ける境界であって、そのものが鑑賞の対象ではなく、肝心なのはその結界を作り出す機能ではないか」(意訳)というようなことが書かれていますが、なるほど、鋭い観点だなと思います。35歳までは現代美術のみに取り組み、それから何年もの間、意識や技術における器づくりとの格闘を経て、41歳で初めて器の展示会を開いたそうです。その間、彫刻家として器を作る意味を問い続け、そこを抜けだしたとき、逆に彫刻という表現に素直に向かうことができたのかもしれません。いまでは、器づくりにも彫刻的要素があるし、彫刻づくりも技術的な側面で器づくりの先鞭になるとのことです。実用と無用の間を行き来して、そして平衡する創作の世界。そういう意味で、この展示会こそが、安藤さんの形而上の意識と形而下の手作業を相互に結ぶ「結界」そのものなのかもしれません。
安藤雅信 彫刻展 結界シリーズ「代(シロ)」
2009年3月2日(月)~7日(土)
12:00~19:00 (最終日は17:00迄)
ギャルリー・ワッツ (東京・南青山) ※ホームページ
by sora_hikari | 2009-03-03 00:39 | 安藤雅信さん