赤木明登さんのお椀

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西麻布 桃居 2008年3月

赤木明登さんの「日々椀」と名付けられたお椀です。高台が大きく、どっしりとした合鹿椀です。存在感のある姿に、繊細な漆の仕上がりが綺麗です。少し大きめのお椀ですので、汁椀だけでなく小丼としても使えます。漆の質感は、見れば見るほど深遠で美しく、手触りや口当たりもとても優しいです。漆は平安時代からあるそうですが、日本独特の発展を遂げ、究極とも言える緻密さを有しています。実に何十という工程を経て、それを実現する訳ですが、かねがね、何故、ここまで執拗に漆の仕上がりを求めたのか疑問に思っていました。本来の目的である木に汁ものや油などを染み込ませず、堅牢にするためのコーティングであれば、下地工程の段階でかなりのレベルでその用に達しているにも関わらず、さらにその上の美しさを求めるのは何故なのか。一般的に言えば、高貴な人々への献上物として磨き上げた技により経済性が伴ったからだろうと思いますが、もう少し違った何かがあるのではないかと思っていました。この疑問を、赤木さんにお尋ねしたところ、なるほどと思えるお話を伺うことができました。それは、人が自然界には存在し得ない、「絶対の平面」、「絶対の垂直」、「絶対の球体」など、神の存在である人では成し得ない領域に少しでも近づきたいという神々しさへの憧れが、塗師たちにあったのではないかというものでした。例えて言えば、「モノリス」のような黄金比を人の手で作り上げるようなものかもしれません。ものづくりを極めていくという過程は、意識しなくとも確かにそういう超越的な存在への畏敬の念があるのかもしれません。

by sora_hikari | 2008-04-29 22:37 | 赤木明登さん

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