2008年 01月 28日
升たかさんの扁壺



西麻布 桃居 2007年12月
升たかさんの扁壺です。へんこと読みます。胴が扁平な壺のことです。この壺は、陶胎漆器といって陶土を下地にして上に漆を施してあります。ご自身では「漆陶」と言っておられました。升さんの作ってこられた陶器は、中東やアジアのような異国情緒のある色使いや絵を描いたものが印象的ですが、この「漆陶」の壺は、むしろ韓国や中国の古い日常品の素朴で質素な風情があります。自分のイメージする黒がなかなか陶器で出せず、漆による手法によってようやくそれを実現されたそうです。数回の焼成の後、更に何度もの漆の焼き付けを行う手間のかかる工程を経てこの色を出されています。元々イラストレーターをしておられ、50歳にして初めて陶芸に触れ、今に至っています。後発であることへのあせりはなく、年齢による境界もなく新たなものへチャレンジされています。「金魚鉢の中の金魚は、若い金魚も年老いた金魚も、同じ水の中で生きているのだから、自分たちも歳を決めつけずに生きて行けばいい。」そう話す升さんの前向きなお気持ちがとても印象的でした。
by sora_hikari | 2008-01-28 20:05 | 升たかさん