漆 塗師物語 赤木明登

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赤木明登さんが編集者から漆の塗師になっていく過程をリアルに書かれています。おもしろくて一気に読みました。塗の工程については知識がないのでイメージできないところもあったのですが、そこに貫かれている漆に向かう姿勢には心を打たれます。修行を終えてからの個人作家としての美意識にも大いに共感するところがあります。それは柳宗悦の言う仏教的な精神に基づく作為を超えた他力道や即如という概念に通ずるもの感じます。赤木さんのことは私が器に興味を持ち始める前にすでにネームバリューのある方だったので作品性よりもお名前が先行してしまうところがあったのですが、今後はもっと素直にその背景とともにものの美しさに目を向けられるように思いました。赤木さんのみならず多くの作家の方がそこに至るさまざまなプロセスを経て作品を生み出していることの素晴らしさをあらためて感じます。器の向こうにあるもの、それをもっと感じながら器に接したいと思いました。

漆 塗師物語
赤木 明登 (著)
文藝春秋 (2006/06発刊)

by sora_hikari | 2007-04-12 00:37 |

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