「藤田佳三展 澄心静慮」5日目

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藤田佳三展 澄心静慮」の5日目。

昨晩よりオンライン販売を開始しました。早速ご注文くださいました皆様に厚く御礼申し上げます。お品物は本日発送済みです。お届けまで暫くお待ちください。

店内及びオンラインストア共に残すところあと20点となりました。点数は少なくなりましたが、今展の中でもひと際目に留まる力作をまだご覧いただけます。

本日、写真でご紹介する「灰釉鉄彩獅子香炉」もその内のひとつです。本展案内状の表紙にも選んだ香炉ですが、同タイプが2点ございます。ひとつは台座に蔓草文を描いたもの(79番)、もうひとつは鳳凰文を描いたもの(87番)です。

獣足を備えた三段の台座には、線刻による文様が巡らされ、その上から施された鉄彩が灰釉のやわらかな黄褐色に溶け込んでいます。上段の舞台は欄干で囲まれ、その中央には鞠に前脚を掛けた「玉取り獅子」が鎮座します。獅子が宝珠や手鞠と戯れる姿は、古くから福徳や守護を象徴する吉祥意匠として親しまれてきました。

本来、獅子は魔を払う猛々しい存在ですが、藤田さんの獅子はどこか穏やかで、人懐こい表情を見せています。象徴的で立派な造形ですが、流れて滲む釉調、甘さを含んだ垂直と水平の輪郭、そして微笑んでいるようにも見える獅子の顔。その造形には、威厳と愛嬌とが不思議な均衡を保っています。

香炉として香を焚くのはもちろんのこと、そして気配を和らげてくれる置物として存在を味わっていただきたい逸品です。

79) 灰釉鉄彩四方獅子香炉 
幅17.5/奥行17.5/高さ28.5cm

【藤田佳三展オンラインストア】
https://utsuwanoteshop.stores.jp/
販売期間:6月13日(土)20時まで

藤田佳三展 澄心静慮(ちょうしんせいりょ)
2026年6月6日(土)~13日(土)
営業時間 11時~18時 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6

経歴
1963年 京都市生まれ
1982年 京都市銅駝美術工芸高校卒業
1986年 京都芸術短期大学陶芸専攻科修了
1987年 小川文斎氏に師事 
1988年 走泥社・林秀行氏に師事
1990年 兵庫県丹波立杭にて修行
1993年 京都府亀岡市にて独立開窯
2026年 現在、同地にて制作

解説
本展にあわせて制作された香炉は、中国古代の副葬品「明器」を想起させる作品です。獅子を戴き、鳳凰の意匠が施されたその姿には、死後の世界においてもなお豊かさを願った古代の祈りが重ねられています。土に還ることなく残り続ける焼き物が、祈りのかたちとして機能してきた歴史は、藤田佳三さんの制作にも静かな影響を与えているのでしょう。

1963年京都市に生まれた藤田さんは、長年にわたり染付や赤絵のうつわで高い評価を得てきました。一般に磁土による硬質な表現が主流とされるこれらの技法に対し、陶土に白化粧を施し、その上に絵付けを行うことで、どこか柔らかく温もりを帯びた器へと昇華させています。安南手を思わせる滲みのある染付や、宋赤絵に通じる余白を活かした構成には、軽やかで洒脱な美意識が宿り、日々の食卓に自然と寄り添います。

その仕事には、中国から東南アジア、さらに中東へと連なる文化の流れが見て取れます。紅安南や飴釉に至るまで、作風は南方的でおおらか。異国の民族的意匠を京都の風土と融和させることで、独自の器の世界を築いてきました。そこに通底するのは、豊穣や繁栄を願う人々の普遍的な想いです。四十年以上にわたる作陶の歩みの中で、藤田さんはオブジェからうつわへの転向、問屋での経験など、時代の変化とともに多様な現場を経てきました。その積み重ねが、確かな技術と柔軟な感性を支えています。

本展のテーマ「澄心静慮(ちょうしんせいりょ)」とは、心を澄ませ、静かに思いをめぐらせること。その言葉が示すように、藤田さんの器と向き合うひとときが、心を澄ませ、自らの内へと静かに意識を向ける契機となれば幸いです。どうぞこの機会に、藤田佳三さんの豊かな表現の世界をご高覧ください。店主


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by sora_hikari | 2026-06-10 18:00 | 藤田佳三展2026

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