「市岡和憲 煎茶道具展」ありがとうございました

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市岡和憲 煎茶道具展」は本日終了しました。会期中ご来店くださいました皆様、ネットを通じてお選びくださいました皆様に厚く御礼申し上げます。尚オンラインストアは本日(12/6)21時までご利用いただけますのでお見逃しの方はどうぞご覧ください。

住所だけを頼りに、京都市内から車で一時間半。美山町の奥へと分け入り、市岡さんの工房をアポなしで訪れたのが、二年半前の夏のことでした。陶芸家の気配をただよわせる建屋の奥から、仙人のような御仁が現れ「見つかりはりましたなぁ〜」と一声。あれが市岡さんとの最初の出会いでした。

いまやSNSやネット検索で誰にでも連絡がとれる時代に、こんな“隠れ里”の作り手がいることに、胸が高鳴ったのを覚えています。十代から陶芸に携わり、師匠のもとでの修行や煎茶家元の仕事を経て、閉じた社会のなかで腕を磨いてきた市岡さん。世間に大きく露出することなく仕事を続けられたのは、むしろ煎茶道具の文化的背景を深めるうえで、必然の環境だったのかもしれません。

職人仕事の傍ら、公募展への出品は地道に続けてきたものの、一般市場を視野に入れ始めたのはここ五年ほど。長い熟成期間を経てきた作り手は、ただ技巧を凝らすのではなく、煎茶趣味が育んできた“風流”そのものをどう提供するかへと視線を向けています。明清代の中国でも、江戸後期から明治の日本でも、煎茶は文人の嗜みとして、形而上的な価値をまとった文化でした。今回の出品作も、急須(茶注)にとどまらず、その周辺の取り合わせまで含めて、文人趣味の世界観を見事に立ち上げています。市岡さんは、ご自身のこの作行を「現代古美術」という言葉で表現されています。

きっと市岡さんのような方を語りすぎるのは野暮なのでしょう。それは重々承知しつつも、時代は変わり、閉じた世界だけで秘伝を守り続けても真価は伝わらない。陽の光のもとに置かれれば、虚飾はすぐ剥がれ落ちます。どこか水木しげる作品の妖怪を思わせる不思議な風貌も相まって、謎めいた陶芸家ではありますが、外へ開くことでいっそう奥行きが伝わってくる。その体験こそ、今回の収穫でした。

これからも手を広げることなく、自身の歩調を守って作り続けていくとのこと。さらに深まっていく円熟味が楽しみでなりません。

最後になりましたが、市岡さんの茶器を用いて瞑想茶会をひらいてくださった齋藤りょう子さん、今展に合わせて写真集を編んでくださった若王子倶楽部の左右様とご関係者の皆様、そして今回初めて市岡さんの煎茶道具に触れてくださった皆様、お茶会に参加して下さった皆様に、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

【市岡和憲展オンラインストア】
販売期間:12月6日(土)21時まで

市岡和憲 煎茶道具展
2025年11月29日(土)~12月6日(土)
営業時間 11時~18時 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート 埼玉県川越市小仙波町1-7-6

経歴
1968年 京都市嵯峨野の和菓子屋に生まれる
1988年 京都府立陶工職業訓練校修了
1989年 八代村田亀水に師事
1996年 京都府美山町にて開窯
2013年 単室薪窯築窯
2017年 中国 宜興で紫砂急須の技術研修
2025年 現在、京都府美山町にて作陶

解説
京都の山あい、茅葺きの里として知られる美山町。その静寂の中で、煎茶道具を作り続けているのが市岡和憲さんです。SNSやギャラリーで作品を目にする機会が少ないだけに、初めて工房を訪ねたときは「見つけた!」という喜びに満たされました。今の時代はなかなかそういう作り手も少ないと思います。

京都市嵯峨野の和菓子屋に生まれ、幼い頃から「人の記憶に残る仕事をしたい」と志した市岡さん。京都府立陶工職業訓練校を経て、煎茶道具や中国古陶磁を得意とした八代村田亀水氏(1927–2018)に師事し、七年間の修行を重ねました。1996年に美山で独立開窯し、2013年には単室薪窯を築窯。さらに2017年には中国・宜興にて紫砂急須の研修を行うなど、煎茶文化の源流をたどりながら研鑽を重ねています。師匠や家元の仕事や取引店への卸しを中心に、これまで手掛けた急須は三万点を超えるといいます。その数は単なる量の記録ではなく、一点一点に積み重ねてきた精進の証でもあります。

市岡さんの茶道具は、機能的な造形や装飾的な華やかさとは異なる、文人趣味の古格ある奥ゆかしさに支えられています。技巧を誇ることなく、しかし茶席における品格を保つその姿には、京都の深い煎茶文化と、茶の湯を支えてきた精神が静かに息づいています。このたび隠れ里の仙人のような市岡さんを川越にお迎えし、茶注(急須)をはじめ、涼炉、湯沸かし、茶入、茶巾台、茶托、茶合、茶通など、独自の煎茶趣味の世界観で統一された道具の数々をご紹介いたします。静かな美と深い精神性が息づく、市岡和憲さんの煎茶道具の世界を、ぜひご高覧ください。店主

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by sora_hikari | 2025-12-06 17:00 | 市岡和憲展

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