「松田苑子展 ときの箱-光と記憶」6日目-3

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黒い長方形の箱。お香を入れて写真を撮ってみました。

17.ときの箱「庭花文」金彩 幅13.3/奥行4.3/高さ2.6cm

【松田苑子展オンラインストア】
販売期間:9月13日(土)21時まで

松田苑子展 ときの箱-光と記憶
2025年9月6日(土)~13日(土)
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6

経歴
1986年 福岡県生まれ
2011年 多摩美術大学工芸学科ガラスプログラム卒業
2013年 東京藝術大学大学院修士課程ガラス造形修了
2015年 金沢卯辰山工芸工房修了
2025年 現在、京都府南部にて制作

解説
ガラス作家・松田苑子さんは、「ときの箱」と名付けたガラスの箱を制作しています。箱の面には季節の草花がレリーフされ、光を柔らかく透過しながら、中に収められたものを優しく包み込みます。光の加減や見る角度によって表情が変わり、日常の中に小さな詩情をもたらす存在です。円形や四角形、六角形など形状は多様ですが、いずれも静謐で統一感のある佇まいを見せています。

これらの箱は、鋳込みガラスの技法「パート・ド・ヴェール」によって行われます。ガラス粉を石膏型に鋳込み、電気炉で焼成したのち、型を割って取り出すため、同じ型を再利用することはできません。取り出されたガラスには多くのバリが残り、箱と蓋がぴたりと合うまで丁寧に切断・研磨を繰り返します。さらに草花の文様をスケッチしてマスキングした後にサンドブラストで彫刻。噴射圧を調整しながら深浅をコントロールすることで、文様は立体的な陰影を帯びて浮かび上がります。気の緩みを許さない工程を重ね、ひとつの箱が完成するまでには膨大な時間と労力が注がれています。

「ときの箱」は、容れ物であると同時に、それ自体が完結したオブジェでもあります。空のままでも存在感を放ちながら、何を入れるかによって新たな意味を帯びます。作家が積み重ねた時間と、使い手がこれから重ねる未来の時間が交差する、そんな想いが「ときの箱」という名に込められています。ガラスの箱は、記憶や感情を抱きとめる器のようでもあり、同時にそれらを可視化する存在でもあります。箱という存在は、古代神話では禁忌や運命を閉じ込める象徴として、現代においては心の奥にある想いを封じ込める装置として機能しています。

ガラスという素材がもつ透過性と硬質さ、そして彫刻された文様の温かさが共存する松田さんの箱は、使い手の物語を静かに待っています。大切なものをそっとしまえば、その想いを抱きとめるように、箱はまた新しい景色を見せてくれるでしょう。作り手と使い手の時間が重なり合い、箱に生命が吹き込まれる。その瞬間を、ぜひ会場で手に取って感じていただければと思います。店主

「松田苑子展 ときの箱-光と記憶」6日目-3_d0087761_20591507.jpg「松田苑子展 ときの箱-光と記憶」6日目-3_d0087761_20591791.jpg


by sora_hikari | 2025-09-11 14:02 | 松田苑子展

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