「松田苑子展 ときの箱-光と記憶」4日目-2

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松田苑子展オンラインストアは、本日(9/9)20時よりご利用いただけます。美しい作品がたくさん揃っておりますので、ぜひご覧ください。

写真でご紹介するのは六角形のガラスの箱、「皐月唐花(さつきからはな)」をモチーフにした「ときの箱」です。皐月は五月を意味する一方で、サツキツツジの名も持っています。そして松田さんの作品名によく登場する「唐花(からはな)」は、特定の花を指すのではなく、奈良時代に中国から伝来した古い文様の呼称で、牡丹を思わせる唐風の花全般を象徴します。

この箱の面には、シンメトリックに展開する様式的な唐花文様が彫り込まれています。乳白のガラスに浮かび上がるその文様は、光を受けて柔らかく陰影を帯び、まるでレースのような繊細さをまとっています。六角の隅に打たれた小さな金彩のドットが、静かな中に艶やかなきらめきを添え、見る者の心をふと「きゅん」とさせる魅力を放ちます。

実用の「箱」でありながら、そこに宿るのは一つの詩的な宇宙。乳白色のガラスは氷片のように冷ややかでありながら、透かして見ると柔らかく光を抱き込む質感を持っています。氷晶のような清澄さと、唐花文様の豊かな装飾性が重なり合い、時を封じ込めるかのような気配を漂わせています。光の加減で常に異なる表情を見せるその姿は、ただ美しいだけでなく、眺める人の心に静かな物語を響かせる存在といえるでしょう。

30.ときの箱「皐月唐花」金彩  径6.2/高さ4.3cm

【松田苑子展オンラインストア】
販売期間:9月9日(火)20時~13日(土)21時まで

松田苑子展 ときの箱-光と記憶
2025年9月6日(土)~13日(土)
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6

経歴
1986年 福岡県生まれ
2011年 多摩美術大学工芸学科ガラスプログラム卒業
2013年 東京藝術大学大学院修士課程ガラス造形修了
2015年 金沢卯辰山工芸工房修了
2025年 現在、京都府南部にて制作

解説
ガラス作家・松田苑子さんは、「ときの箱」と名付けたガラスの箱を制作しています。箱の面には季節の草花がレリーフされ、光を柔らかく透過しながら、中に収められたものを優しく包み込みます。光の加減や見る角度によって表情が変わり、日常の中に小さな詩情をもたらす存在です。円形や四角形、六角形など形状は多様ですが、いずれも静謐で統一感のある佇まいを見せています。

これらの箱は、鋳込みガラスの技法「パート・ド・ヴェール」によって行われます。ガラス粉を石膏型に鋳込み、電気炉で焼成したのち、型を割って取り出すため、同じ型を再利用することはできません。取り出されたガラスには多くのバリが残り、箱と蓋がぴたりと合うまで丁寧に切断・研磨を繰り返します。さらに草花の文様をスケッチしてマスキングした後にサンドブラストで彫刻。噴射圧を調整しながら深浅をコントロールすることで、文様は立体的な陰影を帯びて浮かび上がります。気の緩みを許さない工程を重ね、ひとつの箱が完成するまでには膨大な時間と労力が注がれています。

「ときの箱」は、容れ物であると同時に、それ自体が完結したオブジェでもあります。空のままでも存在感を放ちながら、何を入れるかによって新たな意味を帯びます。作家が積み重ねた時間と、使い手がこれから重ねる未来の時間が交差する、そんな想いが「ときの箱」という名に込められています。ガラスの箱は、記憶や感情を抱きとめる器のようでもあり、同時にそれらを可視化する存在でもあります。箱という存在は、古代神話では禁忌や運命を閉じ込める象徴として、現代においては心の奥にある想いを封じ込める装置として機能しています。

ガラスという素材がもつ透過性と硬質さ、そして彫刻された文様の温かさが共存する松田さんの箱は、使い手の物語を静かに待っています。大切なものをそっとしまえば、その想いを抱きとめるように、箱はまた新しい景色を見せてくれるでしょう。作り手と使い手の時間が重なり合い、箱に生命が吹き込まれる。その瞬間を、ぜひ会場で手に取って感じていただければと思います。店主

「松田苑子展 ときの箱-光と記憶」4日目-2_d0087761_20591507.jpg「松田苑子展 ときの箱-光と記憶」4日目-2_d0087761_20591791.jpg


by sora_hikari | 2025-09-09 18:00 | 松田苑子展

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