2025年 07月 26日
「笹川健一展 硝子の変数 」ありがとうございました











「笹川健一展 硝子の変数 」は本日終了しました。猛暑の続く中、ご来店くださいました皆様、ネットを通じてお選びくださいました皆様に心より御礼申し上げます。尚、オンラインストアは1日延長して、明日7月27日(日曜)の23時までご利用いただけるようにしました。まだまだ素敵なグラスがございますので、どうぞ引き続きご覧いただければ幸いです。
最後にご紹介するのは、京都南部に構える笹川健一さんの工房です。ガラス制作にとって夏は過酷な季節であり、「工房の気温が40℃なら作業可能だが、43℃を超えるとさすが身体にこたえる」とご本人が語る通り、その環境の厳しさは想像に難くありません。
工房は小規模ながら機能的に整えられ、ひとりでの制作に最適化されています。窯も自作されており、作業工程から空間設計に至るまで、すべてが自身の判断で構築されています。吹きガラスは本来2人以上での協働作業が一般的ですが、笹川さんは素材選定から窯の管理、成形、仕上げに至るまでのプロセスをすべて自身で担い、工程を限定することで精神的な自律性を確保しています。
笹川さんは、多摩美術大学、卯辰山工芸工房、大学助手などを経てガラスを学んできました。ちょうど学生の頃に暮らしに根ざした工芸が広がり始め、SNSが作家活動の一環として活用され始めた時期に独立しています。当時アート寄りの造形教育を受けながらも、市場や生活工芸への関心が作家の間で高まりつつある過渡期でした。笹川さんはその文脈に全面的に同調することもなく、また美術領域へ特化することもない、独自のスタンスで制作と向き合ってきたように見受けられます。
このような中間的な立ち位置が、SNSや海外市場の熱狂に対しても冷静な視点を保たせている一因かもしれません。もちろん個人としての資質もあると思いますが、制作に対する一定の距離感こそが、笹川さんの作品に現れる静けさや節度といった性質を形作っていると考えられます。
今回、当店では初めての展示となるため、彼の定番とも言える実用性に重きを置いたラインナップを中心にご紹介しましたが、今後は彼の中にあるよりガラスの性質に目を向けた表現的な側面にも触れられる機会があればと願っております。
最後にこの記録的猛暑の中で、笹川さんのガラスに清涼と安らぎを求めてくださった皆さまに、心より感謝申し上げます。どうぞ水分補給とともに、心の静けさをもたらす器としてお使いのうえ、健やかな日々をお過ごしください。
【笹川健一展オンラインストア】
販売期間:7月27日(日)23時まで
笹川健一展 硝子の変数
2025年7月19日(土)~26日(土)
11時~18時 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート 埼玉県川越市小仙波町1-7-6
経歴
1981年 神奈川県横浜市生まれ
2006年 多摩美術大学大学院修了
2008年 金沢卯辰山工芸工房退所
2014年 多摩美術大学 助手(4年間)
2015年 千葉県印西市に自作の窯を作る
2016年 京都へ移住
2025年 現在、京都府南部にて制作


by sora_hikari | 2025-07-26 17:00 | 笹川健一展

