2025年 07月 25日
「笹川健一展 硝子の変数 」7日目-3












「笹川健一展 硝子の変数 」の7日目-3。
茶杯として、あるいは酒盃として。笹川さんの手によるスモーキーなガラスを透過することで、茶の色味は一層深みを増し、視覚・味覚・嗅覚のすべてで堪能できる豊かな時間が生まれます。
20.端反り平盃
径7.2/高さ3.8cm(±0.5)/40ml
21.錐盃(茶杯)
径6.2/高さ6.4cm/50ml
17.錐杯(茶杯)
径5.6/高さ5.8cm/30ml
【笹川健一展オンラインストア】
販売期間:7月26日(土)22時まで
笹川健一展 硝子の変数
2025年7月19日(土)~26日(土)
11時~18時 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート 埼玉県川越市小仙波町1-7-6
経歴
1981年 神奈川県横浜市生まれ
2006年 多摩美術大学大学院修了
2008年 金沢卯辰山工芸工房退所
2014年 多摩美術大学 助手(4年間)
2015年 千葉県印西市に自作の窯を作る
2016年 京都へ移住
2025年 現在、京都府南部にて制作
解説
透明度の高いクリアなガラスがある一方で、経年によるくすみを帯びた趣深いガラスも存在します。例えば製造技術が十分でなかった時代の窓ガラスに見られる揺らぎや、戦後のガラス瓶の鈍い色彩に、懐かしさや美的価値を見出す人もいるでしょう。ガラス作家・笹川健一さんの作品は、淡く褐色を帯びたガラスの中に、星屑を思わせる微細な気泡が散りばめられた詩的な表情を宿しています。その質感は、ひと昔前のレトロガラスに通じる素朴な味わいを想起させながらも、フォルムには洗練された現代的ラインを採用することで、過去と現在とを有機的に結びつけています。純度の高い原料を用いるのではなく、敢えて再生カレットと呼ばれるリサイクルガラスに微量の酸化金属を加えることで、変数を含んだガラスの多層的な性質が可視化されています。これは単なる懐古再現ではなく、視覚的に“触れる”感覚を追求した、質感とフォルムの対話です。大学時代のカリキュラムでは主にオブジェ制作が中心でしたが、実用的な器にも関心を抱き、空き時間を活用して制作に取り組んでいました。卒業後は、金沢卯辰山工芸工房での研修を経て、母校で助手を務めたのち、2015年に独立。制作環境の中でも特にこだわったのが、自作による吹きガラス用の窯の構築です。通常個人では導入が難しいこの設備を、自らのスケール感に合わせて手作りしたことにより、自身の表現に一層深く没入する基盤を確立しました。この姿勢は原土と焼成にこだわる陶芸家の姿と重なる部分があります。素材の選定から焼成環境に至るまで、すべての工程に作家自身の意識を通すことで作品そのものが思想の具現として立ち上がってくるのです。自己の制御が及ぶ形態と、素材に内在する変数がどのように交差し、響き合うか。その問いに対する応答として、今展ではガラスの本質的な美を再確認すべく、垂直に光を通す「立ち物」であるグラスに焦点を当てた構成となります。既に多くの場で高い評価を受けている笹川さんですが、当店でのご紹介は今回が初となります。この機会にぜひ彼の作品に宿る深い思索と静かな情熱に触れていただければ幸いです。店主


by sora_hikari | 2025-07-25 17:00 | 笹川健一展

