2025年 06月 23日
「巴誉タイル展 幾何の肖像 」3日目






「巴誉タイル展 幾何の肖像 」の3日目。
本日よりオンライン販売の準備を進めております。詳細は明日あらためてご案内いたします。
写真は巴誉さんによる八角形のタイル作品です。
アニマルシリーズとは異なり、古典的な文様構成が特徴で、より洗練された印象を与えます。本作はインド・ムガル帝国時代のアーグラ城塞に着想を得たもので、巴誉さん自身が若い頃にバックパック旅行で訪れた経験に基づいています。
ムガル帝国第5代皇帝シャー・ジャハーンの治世は、インド・イスラーム文化の隆盛期にあたり、建築・美術分野で顕著な成果を上げました。彼はタージ・マハルの建設者として知られますが、晩年には実子によりアーグラ城塞に幽閉され、そこからタージ・マハルを望みつつ最期を迎えたと伝えられています。また白いタージ・マハルと対をなす黒い廟の建設を構想していたという説も残されています。
巴誉さんはこの歴史的背景に着目し、アーグラ城塞のレリーフやインド更紗の文様を参照しながら、本シリーズを制作しました。素材には通常使用している赤土ではなく、黒土を用いています。これは「黒いタージ・マハル」の未完の構想に対する一つの応答でもあり、また黒土によって青釉がより鮮やかに発色することから、作家的にも新たな可能性を見出した試みです。
なお八角形は風水において八方位を意味し、全方位からのエネルギーを受け取る形とされます。また日本文化においても「八」は「末広がり」と解され、吉兆や繁栄を象徴する形状と位置づけられています。
本作は、歴史的記憶と素材的実験、さらには象徴的な形態認識を重ね合わせた作品といえます。視覚的な美しさのみならず、構造と意味の関連に着目しながらご鑑賞いただければ幸いです。
巴誉タイル展 幾何の肖像
2025年6月21日(土)~28日(土)
営業時間 11時~18時 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート 埼玉県川越市小仙波町1-7-6
プロフィール
福本巴誉/Tomoyo Fukumoto
1984年 埼玉県生まれ
2007年 武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業
2007年 広告代理店勤務(3年間)
2010年 タイル制作を始める
2014年 奈良県で制作(5年間)
2025年 現在埼玉県熊谷市で制作(2020~)
解説文
埼玉県熊谷市を拠点に活動するタイル作家・巴誉(ともよ)さんの個展を開催いたします。タイルは古代より、単なる建材や装飾を超え、文明の象徴として歴史を刻んできました。メソポタミアやエジプトの王宮を飾り、イスラム建築では幾何学と精神性が融合したアラベスク模様として昇華され、日本でも飛鳥時代から瓦として受け継がれ、実用と美の両面で進化してきました。そんな悠久の歴史に呼応するかのように、巴誉さんの作品には時代と文化を超えたタイルの深遠な魅力が息づいています。美大卒業後、広告代理店でアートディレクターとしてのキャリアを積んだ巴誉さん。しかし「手を動かすものづくりがしたい」との想いから、タイルの道へと進みます。スペインタイルの絵付け教室で学び、モロッコでは工房を巡り歩くなど、世界各地のタイル文化に触れながら、その精神と美を吸収してきました。地元埼玉で創作を始め、一時はシルクロードの終着点・奈良にも拠点を移し、古都の空気を吸いながら自身の表現を磨き続けました。代表作「やんごとなきアニマルズ」シリーズでは、動物の神聖さや崇高さをテーマに据え、可愛らしさに依存しない、内なる力を感じさせる表現を追求しています。ダークトーンの釉薬に模様を織り交ぜ、文様と動物が一体となった姿は、生命の尊厳と自然との共生を深く語りかけてきます。またアルハンブラ宮殿の装飾から着想を得た「グラナダ」シリーズ、さらには今展で初披露となる、インド・アグラ城とタジマハールにインスパイアされた「アグラシリーズ」では、黒土を用いた深みある色彩で、伝統の重層性と現代的な解釈とを融合するべくチャレンジしています。作品の根底には、「やんごとなき」という言葉に象徴される、気高くも媚びない、静謐でノーブルな世界観が幾何的なタイルの枠の中に表現されています。当店では今回が初のご紹介となります。どうぞ巴誉さんのタイルに織り成される美の肖像を心ゆくまでご堪能ください。店主


by sora_hikari | 2025-06-23 18:00 | 巴誉

