2025年 04月 10日
「土本訓寛・久美子展 清浄無為 」6日目







「土本訓寛・久美子展 清浄無為 」の6日目。
昨晩より始まりました土本展オンラインストアでたくさんのご注文頂きありがとうございます。荷物は順次発送しております。お届けまで暫くお待ちください。展示品は本日(4/10)時点で残り38点となっております。
この杯は、龍の頭を突起としてあしらった焼締めの杯です。炭化による渋みが器全体に深みを与え、内側に彫られた繊細な花文が静かな華やぎを添えています。仏教において「龍」は、天候を司る神格的な存在。中でも中国では、王権や豊穣、そして絶対的な力の象徴として、古来より聖なるものとされてきました。「龍頭蛇尾」という諺が示すように、龍の頭は常に壮麗な始まりを象徴しますが——この土本さんの杯には、尾はありません。ただひたすらに「龍頭」のみを戴き、縁起を担ぎながら酒を味わう、まさにありがたき酒の友。力強さと気品、そして遊び心を備えた、粋な一盃なのです。
焼締陰刻龍頭杯 径7/高さ2cm
【土本訓寛・久美子展 オンラインストア】
販売期間:4/12(土)21時まで
土本訓寛・久美子展 清浄無為
2025年4月5日(土)~12日(土)
営業時間 11時~18時 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6
経歴
土本訓寛 Michihiro Domoto
1979年 福井県生まれ
1997年 岡山県吉備高原学園で備前焼を学ぶ
1998年 福井県工業技術センター 修了
2001年 越前にて薪窯築窯
現在、福井県越前町で作陶
土本久美子 Kumiko Domoto
1976年 広島県生まれ
1998年 宝塚芸大ビジュアルデザインを学ぶ
2000年 福井県工業技術センター 修了
2004年 越前にて薪窯築窯
現在、福井県越前町で作陶
解説
日本六古窯に数えられる福井県の越前焼の里で、象嵌の器を制作する土本訓寛さんと久美子さんご夫妻の展示会です。ご主人が造りと焼きを、奥様が象嵌などの装飾を担当します。訓寛さんは若い頃に備前で学び、ここ越前でも一貫して薪窯で器を焼いてきました。その土の焼き味に可憐な筆致の久美子さんの絵柄が加わることにより、絶妙な枯淡の器が生み出されるのです。
象嵌の器は高麗青磁に端を発しますが、元々は金属技法であった象嵌が焼き物に引用され、素地に文様を彫りその凹部に黒土と白土を埋め込んで模様が作られました。焼き物の場合、金属に比べてその輪郭が曖昧で柔らかな文様になることが特徴です。また近年は象嵌技法で培った文様と越前焼の融合とも言える焼締めに陰刻を施した作品も展開しています。そこに表れる文様には、仏教の影響が色濃く反映され、無常や清浄といった思想が込められています。かつて象嵌の器は、儀式や祈りの道具として用いられ、その美しさと精緻さが、仏教的な意味をさらに深めていました。器そのものが、信仰の表現であり、仏教の教えを具現化する役割を果たしていたのです。
今回のテーマに掲げた「清浄無為」とは、清らかで静かな無為こそが、この世界にとって大切であるという意味が込められています。斯様に超俗的な象嵌文の器で知られるお二人ですが、今展では象徴的な茶道具にも取り組んでいます。どうぞこの機会にお二人の「清浄無為」なお仕事に触れてください。店主


by sora_hikari | 2025-04-10 17:53 | 土本訓寛・久美子展