2025年 03月 31日
「土本訓寛・久美子展 清浄無為 」4/5(土)より




4月5日(土)から始まる「土本訓寛・久美子展 清浄無為 」の出品物です。
お二人の代表的なお仕事といえば、やはりこの象嵌の器でしょうか。蓮唐草や牡丹、瑞鳥、鳳凰といった仏教美術や吉祥文様に通じる優美なモチーフを、生地に鉄筆で繊細に彫り込み、そこへ白土を象嵌することで、格調高い模様を浮かび上がらせています。さらに、鉄絵で黒を挿し、魚々子文を施すことで、奥行きと趣のある表情が生まれ、より一層の深みを湛えた作品へと昇華されています。
象嵌蓮唐草茶壷 Φ7.8/ H6cm/ 100cc
牡丹唐草端鳥文小服盌 Φ11.5/ H5.5cm
牡丹鳳凰文七寸台皿 Φ21/ H4.5cm
土本訓寛・久美子展 清浄無為
2025年4月5日(土)~12日(土)
作家在廊日 4月5日
営業時間 11時~18時 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート 埼玉県川越市小仙波町1-7-6
経歴
土本訓寛 Michihiro Domoto
1979年 福井県生まれ
1997年 岡山県吉備高原学園で備前焼を学ぶ
1998年 福井県工業技術センター 修了
2001年 越前にて薪窯築窯
現在、福井県越前町で作陶
土本久美子 Kumiko Domoto
1976年 広島県生まれ
1998年 宝塚芸大ビジュアルデザインを学ぶ
2000年 福井県工業技術センター 修了
2004年 越前にて薪窯築窯
現在、福井県越前町で作陶
解説
日本六古窯に数えられる福井県の越前焼の里で、象嵌の器を制作する土本訓寛さんと久美子さんご夫妻の展示会です。ご主人が造りと焼きを、奥様が象嵌などの装飾を担当します。訓寛さんは若い頃に備前で学び、ここ越前でも一貫して薪窯で器を焼いてきました。その土の焼き味に可憐な筆致の久美子さんの絵柄が加わることにより、絶妙な枯淡の器が生み出されるのです。
象嵌の器は高麗青磁に端を発しますが、元々は金属技法であった象嵌が焼き物に引用され、素地に文様を彫りその凹部に黒土と白土を埋め込んで模様が作られました。焼き物の場合、金属に比べてその輪郭が曖昧で柔らかな文様になることが特徴です。また近年は象嵌技法で培った文様と越前焼の融合とも言える焼締めに陰刻を施した作品も展開しています。そこに表れる文様には、仏教の影響が色濃く反映され、無常や清浄といった思想が込められています。かつて象嵌の器は、儀式や祈りの道具として用いられ、その美しさと精緻さが、仏教的な意味をさらに深めていました。器そのものが、信仰の表現であり、仏教の教えを具現化する役割を果たしていたのです。
今回のテーマに掲げた「清浄無為」とは、清らかで静かな無為こそが、この世界にとって大切であるという意味が込められています。斯様に超俗的な象嵌文の器で知られるお二人ですが、今展では象徴的な茶道具にも取り組んでいます。どうぞこの機会にお二人の「清浄無為」なお仕事に触れてください。店主


by sora_hikari | 2025-03-31 17:59 | 土本訓寛・久美子展