2024年 10月 12日
「芳賀龍一展 焼物イノベーション」ありがとうございました










「芳賀龍一展 焼物イノベーション」は本日終了しました。会期中ご来店下さいました方、ネットを通じてお選び下さいました方、皆様に厚く御礼申し上げます。尚オンラインストアは明日10/13(日)23時迄ご利用頂けますのでお見逃しの方はどうぞご覧ください。
写真は益子町の芳賀さんの工房の様子です。
ご出身は福島県会津若松市、大学はムサビ(美大)に進みました。最終専攻は彫刻科ですが、陶芸に目覚めたのは大学の陶芸サークル、窯工部です。専任指導者のいないサークルですが、芳賀さん世代には意識の高い人が多く、陶芸家として活躍している仲間がいます。
学生時代から博物館や茶陶系ギャラリーに通い、いわゆる正統派焼き物に関心を持ちました。起点が当時全盛であった生活工芸系にないところが興味深いです。美大とは言え、同好のサークルゆえに順序だった陶芸を学ぶ場ではなかった訳ですが、先輩たちの仕事を見ながら、また陶芸技術書で学びながら手探りで実践・検証して積み重ねた経験が芳賀さんの基礎になっています。
芳賀さんの「焼き物」は保守本流の茶陶とは立ち位置が異なり、かといって生活寄りの「うつわ」とも立脚点が違う点が、新種の動向に思えます。どちらかと言えば、旧来型のストロングスタイルの焼き物でありながら、産地や伝統の枠外にある。そして固定化された素材や方法を根本から捉えようとする。いわば新原理主義と呼べるでしょう。
つい最近まで、このような焼き物を取り上げる受け皿があまり無かったように思います。美術工芸系ギャラリーでもデパート系では浅く見られ、ライフスタイル系ギャラリーでは重く見える。しかしここ数年で受け手側の意識も変化し、芳賀さんのような焼き物を流通させるステージが徐々に増えているように思います。特徴的なのは、生活工芸の主軸が女性型マーケット=つまり「使うこと」を主にした評価基準であったのが、新種の焼き物は男性型マーケット=造形志向、理念などが先立つことです(強いて比較するなら)。
これは旧来型の「焼き物」文化に回帰しているように思えますが、そこに取り巻く人達の違いがあるように思います。作家は全般的に若く産地に依存していない。伝える側の眼は伝統的「焼き物」感だけに留まらない。さらに受け手側(顧客)が従来の焼き物ファンより若く、メディアや美術に近い側にいる人が多い。
作り手と受け手が呼応しながら変化する市場が形成されつつある。まだアーリーアダプターの段階であり、そのパイは小さいけれど、焼き物を「うつわ」としてのみ受け取るのではなく、それを所有することで共有されるのは創造性であって、自分自身にフィードバックする意識の高揚を求める層が生まれつつあるように思います。
このような未定義な段階で自己解釈出来る余地がある頃が一番面白いと思います。この流れがどのような幹になるのか暫く見てみたいと思います。今回多くの方が、今の芳賀さんの「焼き物」をそれぞれの視点で受け入れて下さいました。この実体のある評価こそが、作り手の次の自信に繋がります。
【芳賀龍一展 焼物イノベーション】
2024年10月5日(土)~12日(土)
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6
【略歴】
1984年 福島県会津若松市生まれ
2010年 武蔵野美術大学大学院彫刻コース卒業
2013年 栃木県芳賀郡益子町に築窯
2024年 現在、益子町にて製作
by sora_hikari | 2024-10-12 17:00 | 芳賀龍一展2024