2024年 09月 29日
「芳賀龍一展 焼物イノベーション」開催のご案内
10月5日(土)から12日(土)まで開催する「芳賀龍一展 焼物イノベーション」のご案内です。
「益子から少し離れたところでよい土が見つかって。地味な土と違って洗練されていて、今はそれを焼くのが楽しくて。」先日工房に伺った際に益子在住の芳賀龍一さんのお言葉です。芳賀さんの陶芸は、まず素材を見つけることから始まります。このお宝(土)との出会いが最も刺激的なことで、それを焼くとどうなるかが関心事であり、その体感的な実践こそが作品を支えています。
北関東の土や河原の石を歩いて探し、焼いて試す。本来、地殻変動によって生成された岩石と土は分離したものではなく、風化した砂と有機物が混合して土壌になったものです。高温で焼くことによって、その性質は明らかになり、焼き物として成立します。陶芸は近代になって化学的に分析され、粘土や釉薬の性質が明確になることで安定した生産が可能になりました。その進歩により今では誰もが技法書に従えば、器づくりが可能な時代です。
しかし芳賀さんはマニュアルには添わず素材の境界線がありません。土も石も区別なく、また保守的な焼き物からオブジェにも取り組む。従来の境界を越えてあらたな意識で捉えているところに芳賀さんの新しさがあります。
美大では彫刻を学びましたが、立体よりもインスタレーション作品を手掛け、陶芸は大学の同好倶楽部で独学に近い形で身に付けました。それゆえにいまだに手探りのまま、実験的に土を焼き重ねて結果を得る制作スタイルです。窯業地の益子であっても益子焼を踏襲することなく、起点の定まらない根無し草のような存在です。
ハイカルチャーよりもサブカル、モードよりもストリートに座す陶芸家と言えましょう。しかしその立ち位置だからこそ、旧来の価値観を揺さぶる力があるのです。どんな分野であっても保守本流の定まった範囲(人的序列、価値の固着、既得権益、流通のしがらみ等)のせめぎ合いから革新は生まれづらく、既成概念に添わない変異種が時代を更新してきたことは歴史を振り返っても自明のことでしょう。
このような肩書の定まらないものを受け入れられるかは、受け手側に委ねられます。今の時代を生きる者として、旧来の基準に頼ることなく、今生成されつつある物を自分自身の眼で決められる喜びがあるはずです。作り手だけでなく、我々受け手側もまた自分の境界を越えて物を受け入れることは、作ることに等しく、創造的な行為だと思うのです。店主
【芳賀龍一展 焼物イノベーション】
2024年10月5日(土)~12日(土)
作家在廊日 10月5日
11:00~18:00 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6
【略歴】
1984年 福島県会津若松市生まれ
2010年 武蔵野美術大学大学院彫刻コース卒業
2013年 栃木県芳賀郡益子町に築窯
2024年 現在、益子町にて製作
写真作品
灰被焼締大壷 径42・高さ43cm
土石盤 縦43・横36・厚さ10cm
by sora_hikari | 2024-09-29 18:00 | 芳賀龍一展2024