2024年 09月 03日
「牧由加里 展 塊と塊」9/7(土)より
9月7日(土)から始まる「牧由加里 展 塊と塊」。先日訪ねた山口県周南市にある牧さんの工房の様子です。
牧さんは訓練校で木工の基礎を学び、我谷盆の森口信一さんに師事していた経緯もあり、実用的なお盆も作ります。しかし弊店での個展では、前回も今回も中心に据える作品は特定の用途をもたない造形物です。分かり易く言えば、抽象彫刻、あるいはオブジェ。それも自然の木から別形態の塊を刳り出した人為的な形をしています。しかし彼女の作品から感じるのは、前衛を志向するオブジェといよりも、工芸的アプローチから昇華された「塊」のような造形です。それは「うつわ」や「お盆」を作る行為とも通じる、いやその派生形であるように感じており、彼女自身が求めている「意識」が、これを作らせているように思います。
今はうつわ全盛期であり、木工もテーブルウェアが大勢を占めつつある中、芸術畑からスタートしていない彼女の経歴からみれば不器用な選択のように思えます。「うつわを作れば需要もあるし、楽なのに」と。もちろん一概に言えることではありません。用途をもつ道具も用途をもたない造形物も、どちらに優劣がある訳でなく、それを選ぶ人、商う世界との関係性の中でその役割は成立しています。
しかし実用に準じない純粋性に義を重んじる。そんな意識が牧さんの作品への向き合い方から感じるのです。これは時代との相対性もあるでしょう。表現ばかりが先行した時代には、自己を抑制した道具がある種のカウンターカルチャーであった訳ですが、一方で実用具全盛の今の時代に於いて、それを選ばないこともまた時代の裏返しであり、ぐるっと時代が一周して作者の意識に芽生える反骨精神でもあるように思います。
工房に置かれた無垢の原材料は、分厚く、重く、易々と加工できる印象がありません。それを華奢な牧さんがひとりで運び、図取りし、鑿や鉋で彫り出していく。木の自然な形に委ねず、70年代の彫刻のごとく、自らの力で制していく。その工程を思い浮かべると、木の中の自分の意識を見出そうとしているように思え、言葉にしづらい彼女の「あがき」をなんとかこの個展を通じて探り出したいと願うのです。
牧由加里 展 塊と塊
Yukari Maki Wood Works solid and mass
2024年9月7日(土)~14日(土) 会期中無休
作家在廊日 9月7日
11:00~18:00 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6
プロフィール
1981年 岡山県生まれ
学生時代はソフトテニスに打ち込む
2002年 建築関係の仕事に従事
2013年 仕事をしながら休日に木工をはじめる
2014年 岡山県北部高等技術訓練校木工科に入校
2015年 木工家森口信一氏(京都)に師事
2017年 岡山県にて独立
2020年 初個展。山口県へ拠点を移す
2024年 現在同地にて制作
by sora_hikari | 2024-09-03 18:00 | 牧由加里展2024