2024年 08月 26日
「牧由加里 展 塊と塊」開催のご案内
9月7日(土)から14日(土)まで開催する「牧由加里 展 塊と塊」のご案内です。
ブランクーシの言葉。「単純化は美術の目的ではないが、しかし物事の本当の意味に近づこうとすれば、どうしても単純に行き着いてしまう。」対象をそのまま写すのではなく、その本質に迫ろうとすると単純化が図られる。すでに神によって完成された宇宙や自然の真理は、数学者が解明するごとく単純な数式によって表されるのと同じでしょう。抽象彫刻とはそういう本質の真理を見出そうとする行為の結果なのかもしれません。
牧さんの作品は工芸と彫刻の間にあります。器の内側から形を整えていく旋盤と違って、手による微妙な線に拘りながら無垢の木を鑿(のみ)や鉋(かんな)で刳っていきます。刳りものは木の塊から自分のイメージに向かって外側から削り出していく作業です。分かり易く言えば鑿(のみ)による木彫です。
制作過程は恣意的な意識の塊ですが、しかし結果は無作為な造形物のごとく振舞おうとします。この矛盾を繋ぐものは何なのか。ここを紐解くのが牧さんの作品への理解の第一歩になります。自然物を扱いながら、形状も質感表現も抽象の枠にあります。しかしそれらを見る自己と物体との契約によって抽象化され成立しています。割り切れる公理に基づくユークリッド幾何学よりも、非ユークリッド幾何学であるトポロジー(位相幾何学)のごとく空間、次元、変換といった幅広い概念と共通しています。
2020年の初個展に続く二回目となる牧由加里さんの作品展となります。前回は回転体である壷や器の形状に添った「ゆらぎ」や「うねり」を捉えた抽象作品でしたが、今回は2つの塊と塊を合わせた「ずれ」を形象化した作品をご覧頂けます。solid and mass(個体と質量)、塊と塊の結合。石彫を彷彿させる重量感のある抽象彫刻の様相ですが、無垢の木を刳り出し、鑿痕(のみあと)を残し、漆や箔で仕上げていることから工芸的な要素を基本にした作品であることが分かります。
まだ暑さの残る季節の開催となりますが、牧由加里さんの新作をどうぞ実際に手にとってご覧ください。皆様のご来場をお待ちしております。店主
牧由加里 展 塊と塊
Yukari Maki Wood Works solid and mass
2024年9月7日(土)~14日(土) 会期中無休
作家在廊日 9月7日
11:00~18:00 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6
プロフィール
1981年 岡山県生まれ
学生時代はソフトテニスに打ち込む
2002年 建築関係の仕事に従事
2013年 仕事をしながら休日に木工をはじめる
2014年 岡山県北部高等技術訓練校木工科に入校
2015年 木工家森口信一氏(京都)に師事
2017年 岡山県にて独立
2020年 初個展。山口県へ拠点を移す
2024年 現在同地にて制作
写真作品
双(sou) 材料:楠木 仕上:漆/箔
W210/D200/H166mm
by sora_hikari | 2024-08-26 17:26 | 牧由加里展2024