2024年 06月 30日
「内村慎太郎展 侘数寄ストレートフラッシュ」開催のご案内

7月6日(土)から7月13日(土)まで開催する「内村慎太郎展 侘数寄ストレートフラッシュ」のご案内です。
福岡県糸島市で茶陶に取り組む内村慎太郎さん、弊店初めての展覧会になります。ご覧の通り李朝、唐津などの古陶磁の流れを汲む侘数寄には堪らないやきものを得意とされています。どちらかと言うとコアな茶の湯のやきものを積極的に取り上げることは今まで避けて来たのですが、やはりここに日本的解釈の美が根差していることも事実であり、抗えない葛藤を素直に認めたうえで、内村さんのやきものをご紹介したいと思いました。いわば「侘数寄」のストレートフラッシュとでも言いましょうか、やきものの役満となるど真ん中をこの場に並べてみたかった思いがようやく形になります。
内村さんは高専で土木を学び、卒業後は橋梁を作る仕事をしていました。橋梁工事は組織で多くの人が関わり何年も、時には何十年もかけてようやく完成する壮大な仕事です。一方でやきものは一から十までひとりで完結できる身の丈の尺度で測ることのできる仕事です。やきものに興味を持つ前にはデンマーク家具職人にも憧れた頃もあると聞きましたから、何かを作りたいという思いは、橋梁のような大きな建造物から自分自身の手に納まる造形物へと徐々にシフトしていったのです。
内村さんは古典的なやきものに向き合いながらも代々続くやきもの家系ではなく、あくまで自覚的に選んだ道ということも忘れてはなりません。まずは陶芸教室で基礎を学び、やがてスタッフとして働き、自ら陶芸教室の開設やカフェを併設したギャラリーも運営した経験もあるそうです。李朝や桃山茶陶の習得は、唐津にある曹源窯 小島直喜氏のもとに通うことで基礎的な技術を身に付けました。
しかし技術以上に内村さんを動かしたのは桃山や李朝の古陶磁へ強い憧れがあったからです。生粋の陶芸家のような修業を積み重ねることよりも、自らの心を揺さぶる茶盌に近づくために、結果から逆算した帰納的アプローチが内村さんの茶盌に宿る侘数寄の風合いを生み出しているのです。「脱サラをしてはじめた仕事ゆえに好きを貫きたい。」山居窯を名乗るご自宅の工房を訪ねた際は颯爽と自らお茶をたててくれる際にお聞きした言葉です。観念的思想よりもむしろ「数寄」を先立たせる覚悟なのでしょう。あの時の内村さんの思いが今展を通して皆様に伝わることを祈っております。やきもの好きには堪らない展示会です。どうぞ川越にてご高覧ください。店主
【内村慎太郎展 侘数寄ストレートフラッシュ】
2024年7月6日(土)~13日(土)
作家在廊日 7月6日
11:00~18:00 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6
【略歴】
1975年 鹿児島県霧島山麓湧水町に生まれ
1995年 国立鹿児島工業高等専門学校卒業
橋梁設計に従事後、古陶磁に惹かれ焼物の道に入る
2002年 福岡県糸島市に工房を開く
2002年 曹源窯小島直喜氏に師事
2008年 工房を移し、山居窯開窯
2024年 現在 福岡県糸島市にて制作
写真の作品
熊川茶盌 径13・高さ8cm
by sora_hikari | 2024-06-30 18:00 | 内村慎太郎展