2024年 06月 01日
「中村志野展 木に宿る仏性」ありがとうございました
「中村志野展 木に宿る仏性」は本日終了しました。会期中ご来店下さました方、ネットを通じてお選び下さました方、皆様に厚く御礼申し上げます。またお買い上げ作品を快く会期中展示させて下さいました皆様のご厚情に感謝しております。
尚オンラインストアは明日6月2日(日曜)23時迄ご利用頂けますので、気になる方はどうぞご覧ください。
写真は石川県山中温泉にある中村志野さんの工房の様子です。
今回、中村志野さんによる仏教美術と暮らしの道具の懸け橋となる内容をご覧頂きました。大学時代に木彫を学び、大学院時代に仏像等の文化財の保存修復、さらに研究者時代にカンナやノミなど古い道具の研究をされていたという経歴をお聞きすると、本来もっとアカデミックな領域で発表するべき方のように思いますが、職人仕事に憧れて大学から離れ、石川県山中温泉にある研修所で木工挽き物を学んだことが中村さんの現在の活動に大きく作用しています。
仏像彫刻と暮らしの道具を両立させる作り手は意外といないと思いますが、仏教や修復技術を背景にして、古典様式を取り入れた日常道具への展開は、現在の流行りとは一線を画し、この新鮮さが今回多くの方の関心を集めたように思います。また中村さんご自身の造形的な感覚も見逃せません。全体的に大らかな彫りのタッチで、彫刻の形も表情もどこかしらユーモア―を含み、また作品の仕上げも自然素材を使って誇張がなく、清らかな木の見せ方も中村さん独特の感性だと思います。そこには女性らしさ、さらには母としての母性と愛情が通底しているように感じました。
今展は日常道具(盆、箸置き、菓子切り、椀、皿など)の他に、中村さんの真骨頂である彫刻作品も見応えがありました。こういう作品を選ぶお客様を見ていると、鑑賞性の高い置物としてだけでなく、個人個人の思いを宿すものとして捉えておられるように思い、これらもまた「心の道具」として役割をもっているのだと気づかされます。そう考える本来、仏教の美術品も人々の暮らしと乖離したものではなく、それぞれの思いを託すために日常と繋がった存在だったのだろうと思います。中村志野さんのお仕事の意味は、この時代に於ける祈りと道具の接続のような気がするのです。
まだお子様が小さく、製作に専念することは難しかったと思いますが、素晴らしい作品の数々をご出品頂いた中村志野さんに感謝をお伝えしつつ、今展を終了させて頂きます。この度はありがとうございました。
【中村志野展 木に宿る仏性】
2024年5月25日(土)~6月1日(土)
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6
略歴
1984年 青森県生まれ
2008年 金沢美術工芸大学彫刻専攻卒業
2013年 東京藝術大学大学院博士号を取得
2013年 東京藝術大学にて助手(1年間)
2014年 東京藝術大学にて技術職員(1年間)
2015年 石川県挽物轆轤技術研修所にて挽物を学ぶ
2019年 石川県加賀市山中温泉にて独立
2024年 現在同地にて仏像彫刻や木工作品を制作
by sora_hikari | 2024-06-01 18:13 | 中村志野展