「太田修嗣展 確かなるもの」開催のお知らせ

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5月11日(土)から18日(土)まで開催する「太田修嗣展 確かなるもの」のご案内です。

死ぬときに何が残るのか。いずれは誰しも自分自身に問い掛ける命題です。「確かなるもの」とは、自分が作ってきたもの、それを介して生活を成してきたこと、家族を支えてきたこと、この実感でしかありません。その現実こそが太田さんが歩んできた答えのように思います。

1949年生まれの太田修嗣さんはいわゆる団塊の世代で今年75歳を迎えます。大学時代は学生運動が盛んな頃で体制に依存せず自立しようとする気概は未だにものづくりの底流にあるように思います。社会に出てからは日本の高度成長期を経験し、その後バブル崩壊の景気後退という、日本経済の上昇と下降を経験してきました。その結果、手造りの仕事を選んだのは、自ら身体を使って糧を得ることに現実感があったからでしょう。それは「守るべきもの」でもあったはずです。

作り手というのは言葉なき言葉を形にしている訳で、とくに思想哲学を振りかざすことなく自らの手によって生み出したものが全てを体現しています。それは手触り、実感、それを通じて生まれる人間関係と経済行為であり、この時代に於いても等価交換のような嘘が入り込みづらい世界です。特に工芸家は自然素材と対話しながら、それに沿い、あるいは強いて、工程を進めていくのです。産地のような分業制ではなく、木の仕入れからろくろ、指物、刳り物、下塗りから上塗りまで一貫した制作姿勢は、どこにも属さず自己完結することが必然だったのでしょう。

食を支える器ですから、おおげさに言えば生命を繋ぐ道具でもあります。それは敬虔な行為であり、その道具をもって神に捧げ、そして命を繋ぐ。太田さんの作る漆器は暮らしと調和的な静かさがあり、強さと洗練の間で均衡しているのです。それは木に添って我を一歩外に置き、素材に耳を傾けてきたからではないでしょうか。その触れ合い方が、ものづくりの謙譲の心を支えているのです。きっとこの事実は時代に「残すべきもの」だと思います。ぜひ太田さんの漆器を手にとって考えてみてもらいたいのです。店主

太田修嗣展 確かなるもの 
2024年5月11日(土)~18日(土)
作家在廊日 5月11日 
11:00~18:00 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6

略歴
1949年 愛媛県松山市生まれ
1981年 鎌倉・呂修庵にて塗師の仕事を始める
1983年 村井養作氏に師事 蒔絵や変り塗りを学ぶ
1987年 神奈川県厚木市にて独立
1987年 ろくろ・指物・刳物一貫制作の工房を開く
1994年 愛媛県広田村(現・砥部町)に移転
2024年 現在 同地にて制作

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by sora_hikari | 2024-04-30 18:00 | 太田修嗣2024

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