2024年 04月 27日
「本多亜弥展 Nocturne」ありがとうございました
「本多亜弥展 Nocturne」は本日終了しました。会期中ご来店下さいました方、ネットを通じてお選び下さいました方、皆様に厚く御礼申し上げます。尚、オンラインストアは4月29日(月祝)23時までご利用頂けますのでお見逃しの方はどうぞご覧ください。
写真は奈良県天理市の本多亜弥さんの工房の様子です。鉄粉に気を遣う白磁と染付ゆえに整理整頓された清潔感のある仕事場が印象的でした。工房には展示室も併設され、作品も見ることが出来ます。作る現場に行くと、自ずとお人柄も見えてくるものです。
日常使いのうつわがポピュラー音楽だとしたら、本多さんのうつわはクラシック音楽の領域で発表されているようなものでしょう。日頃はサントリーホールで演奏しているようなピアニストが、今回は民家での演奏会のような感覚だったかと思います。
本多さんが敬愛する明治後期から昭和中期にかけて活動した陶芸家 板谷波山は、当時まだ職人を中心とする産業的だった焼き物を、一個人の芸術作品として「陶芸」を高めた人物です。その後桃山復興で輩出された巨匠たちを経て「陶芸家」のフィールドは美術工芸や鑑賞工芸としてハイカルチャーな領域が中心となっていきました。その保守本流はいまだアカデミックな分野と結びつき、伝統工芸をはじめとする美と技の陶芸の研鑽が続いています。
一方1990年代に勃興し、2000年代に入って顕著になった「普段使い」のうつわは、今やSNSなどのコミュニケーションツールを通じて裾野を大きく広げています。そう、それは意外にも最近の出来事で、かつては陶芸家の手によるものは作品的であり、日常のうつわは雑器として作家が積極的に手掛けるものではありませんでした。しかし時代は変わりポピュラーミュージックが多くの人を魅了したように、うつわは技巧以上に感性が重視される時代を迎えていると言ってもいいでしょう。
クラシック音楽は古典形式を踏まえた技法を用いており、奥深い表現力と多様性を持っています。何百年にもわたって受け継がれてきた作品が多く、時代を超えた普遍的な美しさを感じることができます。しかし専門的な知識や教養が必要とされる場合があり、初心者には理解しにくいと感じる人もいるかもしれません。
ポピュラー音楽はシンプルなメロディーとリズムを用いており、誰でも気軽に楽しむことができ、時代を反映したメッセージやサウンドを楽しむことができます。一方で流行を追いかけるあまり、すぐに消費されてしまう危険性もあります。
クラシック音楽とポピュラー音楽は、それぞれ異なる魅力と課題を持っていますから、自分の好みや目的に合わせて楽しむことが大切です。様々なジャンルの音楽に触れ、自分にとってのベストな音楽を見つけることが心を豊かにしていくでしょう。例えばかつてのクライズラー&カンパニーの葉加瀬太郎さんや、今のKing Gnuの常田大希さんのようにジャンルを跨いで人々を結びつけることも文化醸成には大切なことだと思います。
陶芸もしかり。それぞれの枠の価値観に収まり、未だにお互いに交わることが少ないのが現実ではないでしょうか。おこがましくはありますが、そういう文化を交差させる思いも込めた今回の展示会でした。わずかでも感じ取って下さる方がいらっしゃれば救われます。そして今回この私設の演奏会を快くお受け下さった本多さんにあらためて御礼をお伝えしたいと思います。
【本多亜弥展オンラインストア】
販売期間:4月29日(月祝)23時まで
【本多亜弥展 Nocturne】
2024年4月20日(土)~27日(土)
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6
【略歴】
1977年 奈良県天理市生まれ
2003年 愛知県立芸術大学大学院陶磁専攻修了
2003年 奈良県天理市にて築窯・独立
伝統工芸展、百貨店、美術館などで発表
2024年 現在、天理市にて制作
by sora_hikari | 2024-04-27 17:00 | 本多亜弥展