工芸青花 うつわノート企画展 終了しました

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工芸青花の企画展は本日終了しました。お運び頂きました皆様に厚く御礼申し上げます。尚、これに引き続き、若干内容を加えて川越店の方でも「うつわノート展」を4月6日(土)から13日(土)まで開催することにしました。詳細はあらためてご案内します。

川越でギャラリーを2011年にオープンしてから丸13年となりますが、外で特別にテーマを設けた企画展は何度かやってきましたが、意外と「うつわノート展」を開催したことがなく、今回はここ半年間の川越の展示会を凝縮し、また一部新しい作家さんにご参加頂きながら、全容とまではいきませんが普段の延長のような形で弊店の断面図をご覧頂きました。

あらためて俯瞰してみると、いわゆる日常使いの「うつわ」という内容ではなく、「焼き物」あるいは「陶芸」ギャラリーであるなと思います。普段使いの柔和なうつわよりも、象徴性の強い作品的と言いましょうか。しかし、これらもまた「うつわなるもの」であると考えています。

2005年頃から「うつわ」を見始めましたが、ちょうど暮らしに寄り添う「うつわ」がの全盛期を迎えたころであり、うつわ店やギャラリーのみならず、全国にクラフトフェアが広がり始めた頃に重なり、身近な暮らしの中で使う「うつわ」の謙虚な美しさに感銘を受けるとともに、その価値観と作り手の考えを知りたいとのめりこんでいった記憶があります。

その頃を「生活工芸」の時代と呼ぶことがありますが、その捉え方は様々な解釈があるものの、実体験として確かに大きな出来事であったと思います。それまで特殊な領域にあった「工芸」が一般に開放され、その立ち位置が変わったと思います。それは奇しくも美術の世界で100年前に興った「印象派」のごとく、工芸界のサロンを出て、教条的知識や技巧優先ではなく、暮らしに寄り添ううつわが劇的に変革を起こし、その後の解釈と価値観を変えてしまったと思っています。

それは本来は身近で等身大な存在の中に美しさがあり、日常の中で美と同居してきた日本的な美術観に立ち返るとともに、様々なものが市井の人の手の中に戻り、心が豊かな時代になったと思います。同様に農業、料理、珈琲、服飾、 音楽など他の多くの分野でも同様な変化が起こった時期でした。大げさかもしれませんが、それは閉塞する経済の中で日本がどう精神を豊かにしていくかという未来を示していたように思います。

しかしやがて時を経てそれは定型的なものになり、形骸化を招いた気がしています。形は似ていても当時感銘を受けた精神性が希薄になったように感じました。だからこそ表層をなぞったものでなく、当時と姿は変われどその根底にあるものに目を向けたいと思っています。踏襲された価値の反復でなく、まだ誰も気づかぬ本質を見出したい。あたらしい才能に出会ってみたいと思っています。

結果的にオルタナティブな立ち位置になりがちですが、今おこりつつ新たなものに目を向けることが必要だと思っています。SNSを通じて作る人が直接発信できる時代ですから、ギャラリーの役割は僅かな力でしかないかもしれませんが、「うつわなるもの」の水平に見える未来を信じて、万人に受け入れられるギャラリーになるよりも、ものの普遍性に気付いてもらえる偏屈な思いのまま、時に苦しみ、あがき、不器用ながら、抗えないこの思いを信じてこれからも続けていこうと思っております。

この度、この企画展を主催し考える機会を下さいました芸青花の菅野 編集長並びに佐藤様、平岡様に感謝申し上げます。

うつわノート
松本武明

◆展覧会
「うつわ」の今と未来
内容:うつわノートによる展示会
会期:2024年3月29日(金)−4月2日(火)
会場:工芸青花 東京都新宿区横寺町31 一水寮(神楽坂)
https://www.kogei-seika.jp/gallery/20240301.html

by sora_hikari | 2024-04-02 22:34 | 工芸青花 企画展

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