「四海大展 北関東のワイルドクレイ」開催のご案内

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1月27日(土)~2月3日(土)に開催する「四海大展 北関東のワイルドクレイ」のご案内です。

四海大さんの仕事場は、益子焼の田んぼに囲まれた静かな場所で作陶に集中出来る恵まれた環境です。生まれは関門海峡に面した北九州市門司。地元の学校を卒業した後は、栃木県にある本田技研で自動車部品の設計をしていました。その後職場に近かった栃木県益子町で陶芸家 鈴木稔さんに師事し、さらに窯業技術支援センターで基礎を学び、この地で独立しました。作家としてはまだ4年程ですが、作品を見る限り新人とは思えない重厚感があります。

現在は北関東の原土を自ら掘り、薪窯で焼き物を作っています。火山灰質粘性土である関東ローム層に覆われた北関東の野生の土(ワイルドクレイ)は、東海地方(瀬戸、美濃、信楽、伊賀など)のような高温焼成に耐えうる恵まれた粘土がなかなか産出せず、土のくせに合わせて試行錯誤する必要があります。それゆえに従来の方法論と違い、あらためて土を焼くことで起こる現象に自ずと目を向けた焼き物になります。

益子焼の歴史を辿れば江戸末期に水甕や壺などの日用品が始まりだと言われますが、昭和に入って濱田庄司や島岡達三による民藝の流れに結び付きます。いまでも益子焼と言えば、この民芸調の作風を思い浮かべますが、個人的な経験で言うなら関東の大きな経済圏に最も近い窯業地であるがゆえに、時代時代に合わせてそのスタイルを変化させてきた中心となる様式のない焼き物産地という印象があり、どこを軸に据えればいいのか常々翻弄されてきました。

ここ数年でしょうか。現在のうつわブームとは違った「焼き物」を志す作り手が増えてきたように思います。土や釉薬、焼成方法のセオリーも従来の方法論に頼らずに、型を崩して「焼き物」を再解釈しようとする流れです。この益子で興っている事象を捉えている一人が四海大さんなのです。桃山陶に準ずる茶陶の流れを汲む産地であれば、古陶に近づくために土に拘る方も多く、またその価値観を理解する特殊なマーケットも存在します。

しかし益子を始めとする新たな「焼き物」の解釈は、旧来的な焼き物好きの支持者は少なく、その価値を受け入れる顧客の絶対数の不足があり、苦労の多い製作方法にも関わらず価格転嫁することが難しく、結果が経済的に結びつきづらい状況でした。しかしそれゆえに意義がある仕事とも言えます。

いま生成されつつある新たな「焼き物」の姿。それをどう現在進行形のマーケットと結びつけていくのか。こういう視点で四海大さんの仕事を捉え、ご紹介できることは弊店としても喜ばしいことです。どうぞ皆様もこの新たな動きに反応した四海さんの北関東のワイルドクレイによる動と静を織り交ぜた焼き物をご高覧頂ければ幸いです。店主

四海大展 北関東のワイルドクレイ
2024年1月27日(土)~2月3日(土)
作家在廊日 1月27日
11:00~18:00 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6

プロフィール
1992年 福岡県北九州市生まれ
2013年 自動車メーカー勤務
2017年 栃木県窯業技術支援センター入所
2024年 現在、栃木県益子町にて制作

写真の作品
窯変焼締め壷 径22・ 高さ23.5 cm

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by sora_hikari | 2024-01-21 18:00 | 四海大展

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