2023年 12月 20日
「中田光展 文人茶」5日目-5
「中田光展 文人茶」の5日目-5。
中田光展オンラインストアを開始しました。販売期間は本日12月20日(水)20時~24日(日)23時までとなります。
Hikari Nakada Exhibition Online Store is now open. The sales period is from today, Wednesday, December 20, 20:00 to Sunday, December 24, 23:00.
ご紹介するのは三友居、具輪珠、萬豊順記、水平壺など中国の古典に基づく茶壺です。中国茶壺の定型ともなる形ゆえに、これをどう解釈するかは現代の作り手ごとに異なるでしょう。忠実に「写す」こともあれば、アレンジして「表現」することもある。
さて中田光さんの場合はどうか。
先にもご説明した通り、「妄倣」(妄想しながら倣う)という造語を使って表しています。例えば具輪珠や萬豊順記を青木木米やその時代の陶芸家が自分の個性や技術を出しつつ真似ていたらどんなものになったのかと空想して作る試みです。模倣や倣古と言うほどの「写し」ではなく、また「型」に寄り過ぎる姿勢にも疑問を抱き、かといって「表現」というほど振り切っておらず、その妄想をどう具象化するかが中田さんの取り組み方です。
それは歴史小説を書くことに近いように思います。史実に添いながらも、その解釈や人物の描き方は、作者によって様々です。大河ドラマしかり、リドリースコットの「ナポレオン」しかり。どういう側面から見るか、そこに作者の視点や言葉が生まれます。その成果に対する賛否はまちまちですが、しかし歴史をどう読み取るかは現代に生きる読み手の喜びでもあるでしょう。
中田さんのこれらの「妄倣」茶壺を見る限り、古典の形を軸にして、土のアレンジ(主に群馬、茨城、栃木)を行い、仕上げも抹茶碗的エッセンスを残しつつ、極端に振り過ぎない落ち着いた佇まいになっています。古典を見つめ自分の立ち位置からどう昇華させたかがこの茶壺の意味するところです。
美大出身かつ群馬を拠点にする中田さんにとっての名器写しは、中国の宜興窯を引き継ぐ立場ではなく、京都歴代の煎茶器作家の家系でもなく、常滑や万古といった技巧の高さを極める方向でもなく、煎茶道に則した深い知見からでもありません。思慮深くも、素直には写さず、王道ではない自分の立場に対する屈折した意識も透けて見えてきます。それゆえにどう考えるか、いや考えたかが中田さんの急須を読み解く面白さでしょう。悶々と悩みつつ、どう形にしたのか。この葛藤を共感し得てこそ、使う側の思いもさらに深まるはずです。
妄倣の急須こそ、中田光さんの考えを象徴していると思うのです。
19)妄倣水平壺(共箱)100ml/W12.3/D7.5/H6.5cm
41)妄倣三友居(共箱)110ml/W12.0/D6.8/H7.5cm
31)妄倣具輪珠(共箱) 120ml/W12.0/D7.5/H8.0cm
32)妄倣萬豊順記(共箱)90ml/W12.0/D7.5/H5.5cm
26)妄倣水平壺(共箱)110ml/W11.5/D6.5/H8.5cm
中田光展 文人茶
2023年12月16日(土)~23日(土)
作家在廊日 12月16日
11:00~18:00 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6
プロフィール
1983年 神奈川県生まれ
2006年 武蔵野美術大学 デザイン情報学科卒
2008年 武蔵野美術大学大学院 陶磁専攻修了
2013年 群馬県桐生市に築窯
2023年 現在同地で製作
by sora_hikari | 2023-12-20 20:00 | 中田光展2023