2023年 12月 10日
「中田光展 文人茶」開催のお知らせ

12月16日(土)~23日(土)に開催する「中田光展 文人茶」のご案内です。
群馬県桐生市の中田光さんの2020年に続き第二回目となる個展です。今回も前回同様に急須に拘った内容になりますが、その方向性はより鮮明になりつつあります。中田さんの急須は中国から煎茶がもたらされた江戸時代の「文人趣味」の流れを背景としています。急須でお茶を淹れる文化は1654年に中国福建省から来た隠元禅師が伝えた中国明時代の喫茶法によります。その後江戸中期の禅僧 売茶翁が京の街路で煎茶を売り、禅や茶の精神性を伝え同時代の文人に大きな影響を与えました。その背景には当時の茶の湯と禅宗の堕落に対する批判があり、自由な気風で煎茶を飲み清談を交わす煎茶が文人の間に流行しました。
文人の世界は、香を焚き、茶を飲み、詩書画を楽しみ、部屋を飾り、文学・学問を語り合うなど、風雅の道に心を寄せることでした。煎茶は中国宜興窯で作られた茶壺(急須)による茶葉を使った飲み方でしたが、その渡来品に倣い、京都の陶工 青木木米や仁阿弥道八達が中心になり京焼の煎茶器の基本が作られました。当時「木米急須」は煎茶器のシンボルになり、京都の陶工たちが中国煎茶器に基づく急須を広めていきました。
今回、中田光さんの急須は、このような時代を背景にしたものですが、模倣や倣古と言うほどの「写し」の意識ではなく、また「型」に寄り過ぎる姿勢にも疑問を抱き、かといって「表現」というほど振り切ってもおらず、その眼目を現代にどう融合させるかを肝としています。例えば紫砂急須の具輪珠や萬豊順記を木米やその周辺の陶芸家が自分の個性や技術を出しつつ真似ていたらどんなものになったのかと空想して作る試みです。中田さんはこれを称して「妄倣」(妄想しながら倣う)という言葉で表現しており、古典に対して自分の意識をどう昇華させるかが基本にあるのです。
茶を喫することは、喉を潤し味わいを楽しむ生理的な欲求を満たすと共に、茶を介して精神を律する作用があるように思います。またその道具である急須は機能性を極める方向もあれば、その内面に降りていく世界もあるでしょう。当時の文人茶の意識を現代にどう変換して伝えるのか。文化的な知性をくすぐる急須。そこに隠された物語を読み解く楽しさ。つまりは自分の奥行に触れることなのです。茶に遇うては茶を喫す。即ち、悟りを得た人は淡々と暮らし、こだわりの無いそのままである、という達観した文人茶の世界に誘う急須展になれば幸いです。本年最後の展示会をどうぞご高覧ください。店主
中田光展 文人茶
2023年12月16日(土)~23日(土)
作家在廊日 12月16日
11:00~18:00 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6
プロフィール
1983年 神奈川県生まれ
2006年 武蔵野美術大学 デザイン情報学科卒
2008年 武蔵野美術大学大学院 陶磁専攻修了
2013年 群馬県桐生市に築窯
2023年 現在同地で製作

by sora_hikari | 2023-12-10 18:00 | 中田光展2023

