2023年 10月 27日
「安永頼山 展 古唐津再考」7日目
「安永頼山 展 古唐津再考」の7日目。会期は残すところあと1日になりました。最終日の10/28(土)は17時で終了させて頂きます。安永頼山さんにとって試金石となる古唐津茶盌を、どうぞこの機会に手に取ってお確かめください。
古唐津は、茶の湯の歴史や古陶磁愛好家の中で定評のある焼き物ですが、前提知識がないまま目にすれば華やかな絵付けや色彩がある訳ではなく、全般的に地味で朽ち葉のように枯れた風合いです。地面に転がっていれば同化しそうですし、小さな子供と一緒に鑑賞してもその良さを伝えるのは難しいかもしれません。
ではなにゆえにこれが賞玩されるのか。質素なものに趣があると感じる「侘び」や、時間の経過による儚さに奥深さを感じる「寂」といった所謂「侘び寂」という、負の要素から感じ取る日本人的な美意識と通じると考えれば、古唐津の魅力も分かり易くなります。
しかし誰もがこの知識に添って見ているのではなく、もっと普遍的な感覚と通ずるものがあるように思います。自然との共生を尊ぶ日本文化。古刹や古道に感じる感傷的情緒性。直接的な視覚ではなく、その背景から呼びこされる情感。それは侘び茶の歴史が興る前から、すでに和歌で詠まれていた自然や感情の間接的な捉え方からも分かるように潜在意識に備わっている感覚のように思います。
焼き物の見方にも重なりますが、文学も言葉を理解することよりも、文脈が掴めること、さらには行間から感じとることができることは、直接な解釈よりももっと抽象的で自分自身の咀嚼力と感性が必要とされることです。
つまり日本の焼き物に向ける目は、外形的な美的尺度とは違ったもっと抽象的な目に見えないものを感じ取るセンサーだと思うのです。そこを読み解く楽しさ、それを感じ取る喜び。そういう意味で唐津の良さを知ることは、日本的な美意識を磨くよい教材だと思うのです。茶盌は茶を喫する道具であると同時に、その人を高揚させる向精神作用がある。それと古唐津を結びつけるのは、やや我田引水ではある気もしますが、あながち間違っていない例示と思っているのです(小声で)。
【安永頼山展オンラインストア】
公開:10/29(日)23時まで
安永頼山 展 古唐津再考
2023年10月21日(土)~28日(土) 会期中無休
11:00~18:00 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6
プロフィール
Raizan Yasunaga Profile
1970年 島根県益田市生まれ
2001年 田中佐次郎氏に師事
2003年 藤ノ木土平氏に師事
2008年 登り窯を築窯し独立
2013年 田中佐次郎氏命名の「頼山」に改名
2023年 現在、佐賀県唐津市北波多にて制作
by sora_hikari | 2023-10-27 18:00 | 安永頼山展2023