2023年 09月 29日
「常滑 磯部商店 急須問屋の仕事」7日目-3










「常滑 磯部商店 急須問屋の仕事」の7日目-3。
今展は磯部商店さんの品揃えにより、さながら常滑急須の祭典となっておりますが、一方で産地を支えてきた問屋業(卸業)の磯部商店さんの立ち位置に視点を置いた企画であり、弊店の産地シリーズ、美濃の製土業に続く第二弾にあたります。
全国の工芸産地や消費地における「問屋」は、産業構造の変化に伴い、市場が激減しているのが実情です。大量消費・大量生産の終焉、百貨店等の流通縮小、贈答需要の減少、海外生産への移行、消費者の生活スタイルの変化など、問屋が機能していた時代に比べて流通構造が大きく変わったことが原因であることは、誰もが知るところです。
このような市場変化の中で何ゆえに磯部商店は元気なのか。もちろん創業時の60年~70年代の高度成長期、80年代のバブル期に比べれば売り上げは減少しているそうですが、しかし何故今なお問屋として維持出来ているのか、興味はそこにありました。
2年前に常滑の焼き物団地「セラモール」にある「急須と器のいそべ」(小売り店名)に伺った際に、売り場面積の広さ、品揃えの豊富さもさることながら驚いたのは、裏側と2階の倉庫にストックされた急須の多さでした。卸業ゆえにすべてが仕入れ品。今展の550点の出品も委託品はなく、全点買い取ったものである、ということへの驚きもあります。今の時代に、これだけのストックを持つこと。仕入れの支払いを続け、なお品物を動かしていくこと。大量消費時代であれば納得できるものの、なぜそれを続けているのか。
今回の展示を通して分かったのは、急須という専門領域であったこと、大量消費時代にも小さなものを切り捨てなかったこと、小口を大切にし、時代の多様性に合わせて来れたこと。量産もの、職人による窯元もの、作家もの、美術寄りの高額なものなど幅の広さが時代にきめ細かく対応でき、またセラモールにおける小売り業への進出と、急須以外の常滑作家との人脈など、アメーバ的な面展開によって、不況の分野を下支えし、時代に対応できたのでしょう。また海外の需要(欧州や中国)への対応も貢献しているようです。そして何よりも常滑で作り手の信頼の厚さがあり、お茶好き・急須好きの熱い需要にきちんと応えられる引き出しの多さも大きいでしょう。
以前、印刷会社の方に聞いた話ですが、昔は大量印刷(新聞のちらしや出版)に対応する大型で高速の輪転機への設備投資に比例して需要が伴っていたけれど、今の時代は大きな需要がない代わりに、どれだけ小口の需要を一台の輪転機に版を合わせて効率的に回せるかという時代に変化しているそうです。ネットを使ったオンデマンドへの対応もまさにそれにあたり、決して需要がゼロになった訳でなく、市場の性質が変化しているのです。
今はグロスで市場を捉える発想ではものは回らない時代です。90年代から既に大衆ではなく、分衆の時代と言われていましたが、ネットやSNSの発達により、さらにニーズは細分化しているのが実情です。生物は環境変化に対応して多様性を確保し生き残ってきました。かつて栄光時代の「問屋」というシステムは崩壊し、いま新たな市場の声を聞くことのできる「聞屋」であること、変化できることが大切なのです。そのために必要なことは、人(作る人と使う人)に対する愛情(リスペクト)ではないでしょうか。磯部商店さんの皆さんを見ていると、そこが一番の肝だと思います。
磯部商店さんを通じて、もっと深い急須の世界を知って頂ければと思っております。明日最終日に、磯部社長が在廊して下さることになりました。どうぞご本人からいろいろな話を直接お聞き頂ければと思います。
【磯部商店展オンラインストア】
公開:9月30日(土)23時まで
常滑 磯部商店 急須問屋の仕事
2023年9月23日(土)~30日(土)
営業時間 11時~18時 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6
049-298-8715 utsuwanote@gmail.com


by sora_hikari | 2023-09-29 18:00 | 磯部商店

