「稲吉オサム展  渥美古窯レクイエム」開催のお知らせ

「稲吉オサム展  渥美古窯レクイエム」開催のお知らせ_d0087761_00542540.jpg

「稲吉オサム展  渥美古窯レクイエム」開催のお知らせ_d0087761_00542908.jpg


6月10日(土)から17日(土)まで開催する「稲吉オサム展  渥美古窯レクイエム」のご案内です。


愛知県豊橋市で渥美古窯の再興に取り組む稲吉オサムさんのお仕事をご紹介します。渥美古窯は平安末期から鎌倉時代に陶器を焼いた窯群です。渥美窯は猿投古窯の流れを汲み、三河湾をはさんだ知多半島の常滑と同時期に始まりましたが、常滑が現役の窯業地として稼働しているのに対し、渥美は200年ほどで途絶えてしまいました。その存在が明らかになったのも約60年前と遅く、ルーツ、採土地、窯場の全容、終焉の理由などいまだ解明されない謎の多い古窯です。当時は山茶碗や皿類の日常器に加え、宗教用具である壷や経筒などの特注品が作られていました。施釉された陶器も早く、国宝秋草文壷で知られるように文様や記号を施した仏教に纏わる壷の美しさは特筆されます。


稲吉さんは渥美古窯の中心となる豊橋市で生まれ育ちました。高校中退後は塗装業、瓦屋、内外装業、荷役、建具屋など様々な職を経験しますが、22歳の時に他界した祖父の遺骨を入れる既製の骨壷を見て、自らの手で焼いた壷に入れてあげたいと思ったことが陶芸の道へ進むきっかけとなりました。陶芸教室を経て24歳で瀬戸の窯業校で基礎を学び、その後美濃の窯元で修業を積みました。28歳で地元に戻った当初は志野や織部といった桃山陶を手掛けますが、やがて自分の原点となる渥美焼に傾倒していきました。先例のない渥美焼ゆえに手探りのスタートでしたが、地元で土を掘り、古陶や古い窯跡を参考にしながらその再興に取り組んでいます。


渥美の魅力は仏器ゆえの陰と陽の関係と言います。当時末法思想の広まる中、鎌倉や平泉に運ばれた仏器の数々。極楽浄土を願うための焼き物の姿。若い頃から常に「人生全て何かが違う」と違和感に苛まれつつ、ひとところに留まらず自らの身体を使って生きてきた稲吉さんにとって、渥美との出会いは運命であり唯一の選択であったのでしょう。


古い農家を使った工房には壁にアナクロなポスターや新聞が貼られ昭和レトロな空気が流れています。若尾文子ファンを自認するのは時代錯誤か懐古趣味か。いや、稲吉さんにとって幻の渥美への浪漫と同様に、時代を経ていまだに輝く進行形なのでしょう。そんな彼だからこそできる途絶えた渥美古窯への鎮魂歌(レクイエム)であり、美しさを称える讃美歌でもあるのです。面白い人物と出会えました。ぜひこの機会に稲吉オサムさんにご注目頂ければと思います。店主


稲吉オサム展  渥美古窯レクイエム

2023610日(土)~17日(土) 

作家在廊日 610

営業時間 11時~18時 最終日は17時まで

ギャラリーうつわノート

埼玉県川越市小仙波町1-7-6

地図


プロフィール

1976年 愛知県豊橋市生まれ

2002年 愛知県立窯業技術専門校修了

2002年 美濃焼の窯元で学ぶ

2007年 豊橋市にて築窯

2023年 現在同地にて渥美古窯再現に取り組む


「稲吉オサム展  渥美古窯レクイエム」開催のお知らせ_d0087761_02140547.jpg
画像の拡大


by sora_hikari | 2023-06-05 09:00 | 稲吉オサム展

<< 「稲吉オサム展  渥美古窯レク... 「あたらしい日常料理ふじわら」... >>