「田村文宏展  日本焼物創生(猿投・瀬戸・渥美)」6日目

田村文宏展  日本焼物創生(猿投・瀬戸・渥美)」の6日目。

古瀬戸と言えば、瓶子、四耳壷、水注の印象がありますが、それらは古瀬戸前期(12世紀後期~13世紀後期)に、当時中国宋代の焼き物をお手本にしたものでした。時代を経るにつれて器種は増え、中期(13世紀後期~14世紀中期)は壺瓶に加えて天目茶碗や平碗など、さらに後期(14世紀後期~15世紀後期)には皿鉢などの生活用品の生産が多くなり、江戸期には食器の代名詞となる「せともの」の一大産地として発展していきました。

田村文宏さんが作るこれらの瓶子は、古瀬戸の前期に見られる器種ですが、中国陶磁を本歌にする鎌倉幕府に向けの高級なアイテムでした。しかし中国の完成された品質ほどではなく、材料や技術の差による緩さが伴います。田村さんのもう一方の軸となる東南アジアの古陶磁も同様に中国からの影響を受けつつも、ある種の甘さがあり、この不完全性がむしろ日本の歪な焼き物の美意識に通じるのです。

瓶子は現在でもお神酒を注ぐ祀りごとの神聖な道具ですが、むしろこの田村さんの瓶子は、彫像のように鑑賞性の高い立像として捉えたいと思います。峻厳な様式美を備えながら、釉調の曖昧さによる哀愁があり、灰釉や鉄釉の流れが大きな見どころになっています。現在は古瀬戸の瓶子を作る陶芸家をあまり知りませんが、1960年に加藤唐九郎が引き起こした永仁の壷事件(瓶子の贋作)が、当時の社会的スキャンダルとして大きく報じられたのは、裏を返せば、それほど古瀬戸に関心があった時代であったとも言えるのです。

猿投古窯から古瀬戸への繋がりは、時代も地域も曖昧なところがありますが、同地域で焼き物に取り組む田村さんにとっては、古瀬戸を掘り下げていくことで当時の陶工たちの意識と繋がるロマンでもあるでしょう。

42) 灰釉瓶子/瀬戸(高さ28.5/ 胴径20cm)
38) 灰釉花唐草文瓶子/瀬戸(高さ26.5/胴径19cm)
4) 鉄釉巴文瓶子/瀬戸(高さ25/胴径17.5cm)

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【田村文宏展オンラインストア】
https://utsuwanoteshop.stores.jp/
公開期間:4/18 20:00~4/22 23:00迄

田村文宏展  日本焼物創生(猿投・瀬戸・渥美)
2023年4月15日(土)~22日(土) 
営業時間 11時~18時 最終日は17時まで
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6

プロフィール
1978年 愛知県岡崎市生まれ
2000年 東南アジア・インドへ遊学     
2004年 瀬戸窯業高等学校陶芸専攻科卒業
2005年/06年 ホンジュラス共和国にて窯業サポート
2010年/12年/14年 カンボジアにて窯造りの手伝い
2021年 笠間陶芸大賞展二部 優秀賞
2023年 現在、愛知県岡崎市で制作

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by sora_hikari | 2023-04-20 19:24 | 田村文宏展2023

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