「水谷渉展 規格外」の6日目。
粘土を土型に押しあて色釉を使ったポップなリム皿やオーバル皿。水谷さんの茶碗が脱・桃山陶だとすれば、こちらは「うつわ」の枠から外れようとする脱・クラフトと言えるかもしれません。
一見すると新しいアプローチに思えますが、こういうポップな焼き物は80年代~90年代に全盛期がありました。当時のアート界のニューペインティングに添うように、焼き物という枠から逃れて、自由を謳歌する前衛的なうつわの流れ。陶芸もモードからストリートへの変革を迎え、見たこともない表現を競うような陶芸が勃興したのです。それは焼き物を取り巻くマーケットへのカウンターでもあったように記憶しています。
面白いのは、その反動として90年代後半から2000年代にかけて自己表現を抑制して、道具の美しさを求める流れにシフトし、一気に生活工芸の時代を迎えたことです。そう、生活向きのうつわは、権威に対するカウンターというよりも、表現過多なストリートカルチャーとの決別であったという逆説的な展開と読み解くことも出来ると思います。
うつわを取り巻く環境もその後、大きく変化しています。シンプルから装飾へ、無機質から有機的へ、プロダクト的表現から原土薪窯の焼き物サードウェーブへ、グローバルからローカルな土着へ、マーケットも国内から中国圏への広がり、さらにSNSによる市場や評価基準の拡散など、ひと言では括り切れない状況です。
さて、水谷さんが今展に向けて「新作」として提出したこれらのポップなうつわは、時代がぐるっと一周してどのように若い世代に届くのか、これも今回着目してみたいと思います。
【水谷渉展オンラインストア】
Wataru Mizutani Exhibition Online Store
1月14日(土)23時まで
Until 23:00, January 14 (JST)
水谷渉展 規格外
2023年1月7日(土)~1月14日(土) 会期中無休
営業時間 11:00~18:00 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6
経歴
1975年 愛知県に生まれる
1990年 陶芸を始める
1994年 唐津で修行
1996年 鯉江良二氏に師事
2000年 岐阜県飛騨高山に築窯
2011年 島根県松江市に移住
2016年 唐津にて作陶を始める