2022年 11月 27日
「森口信一展 我谷盆と五様の彩り」ありがとうございました
会期早々に我谷盆が少くなくなりご希望の方全てにお渡しすることが叶わず申し訳ございませんでした。森口さんにお聞きすると、ここ数年の展示会で同じような状況が続いているそうです。これもひとえに森口さんの情熱の賜物であり、その心が多くの方に伝わっているからでしょう。森口さんの我谷盆をひとつは持ってみたい。使う喜び、育てていくお盆。その気持ちがよく分かる展示会でした。
往々にしてモノの価値は徐々に固定し、ブランドとして確立していきます。その過程で当初のモノの意味は薄れ、記号的に認識され、疑いをもつことなく広がっていきます。それはモノが流通するうえに於いて必要なことではありますが、しかし単なるブランド化することで、モノの意味が忘れ去られてしまうのは悲しいことです。その本質はどこにあるのか、考えることも大切でしょう。
森口さんが常に情熱的に語る我谷盆の話は、その意味を知って欲しいという思いから湧き出るものだったように思います。自分で作ったものを、きちんと受け渡したい、展示会場にいるとその思いが伝わってきます。今回も京都から走行距離30万キロを超える旧式フォレスターを駆って、500キロをおひとりで運転し納品して下さいました。初対面では我谷盆の爺さん(失礼!)という印象でしたが、元は京都芸大のサッカー部、卒業後も試合を続け、体躯も矍鑠とし、年老いた漁師のような眼光に作り続けるパワーを感じ、誤想を反省した次第です。
今日も昭和歌謡の流れる車内で煙草に燻されながら、あのフォレスターで山中温泉の風谷アトリエに赴いているようです。願わくば京都アトリエに森口さんを師と仰ぐ弟子が一人いればと思います。インスタの大量な投稿もまた森口さんらしく笑、これからもお元気で信念のあるお仕事を続けて欲しいと思います。
また今展は当初森口さんと同世代の陶芸家と二人展を考えていましたが、途中で方向を改め、比較的展示会経験の少ない5人の作家さんに盆上を彩る作品をご出品頂きました。至らぬ点も多い中、趣旨を上回る作品をご提供頂き、この場を借りて御礼申し上げます。
皆さまのお手元にお渡しした作品が、皆様の心を豊かにし、日々のお暮しと共に末永くご愛用頂けることを願っております。この度はありがとうございました。
by sora_hikari | 2022-11-27 17:00 | 森口信一展