「松田苑子・黒木紗世 二人展 花の記憶」ありがとうございました


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松田苑子・黒木紗世 二人展 花の記憶」は本日終了しました。会期中ご来店下さいました方、ネットを通じてお選び下さいました方、皆様に御礼申し上げます。尚、オンラインストアは本日7/24 23時までご利用頂けますので、お見逃しの方はどうぞそちらをご覧ください。

松田苑子さん(写真左側)と黒木紗世さん(写真右側)には、2020年2月に新潮社・工芸青花の主催する「工芸祭」にて、うつわノートの企画展示にご出品頂いたことがあります。

工芸祭は「『生活工芸』以後の工芸」がテーマでしたから、「生活工芸」を相対化するふたつの視点から企画しました。ひとつは、飾りを排した「生活工芸」時代との対比として「装飾」のある工芸を取り上げること。もうひとつは、生活工芸領域と美術工芸領域を接続する試みです。

この二領域を接続しようとした理由は、(生活工芸の負の要素)安易な拡散は文化を劣化させ、(美術工芸の負の要素)伝統の保守だけでは代謝が進まないように考えたからです。この二領域はいまだ交じり合っておらず、両者の歩み寄りにこそ、次代の工芸を示す可能性があると考えたことがきっかけでした。

今思えば大上段に構えた企画は恥ずかしくもありますが、しかしソリューションのテーマ設定とは得てしてそういうものですからそれは良いとして、しかしほとんどの人にはその意図が伝わらかったように思います(作品の評価は高かったのですが)。

元々明瞭な線引きはないにしても、確かに流通側にも製作者側にもこの分断はいまだにあるように思います。目的(鑑賞、実用)、技巧、対象者、価格帯などの違いにより交じり合わない。しかし丁寧に手繰っていけばグレーゾーンはあるもので、その波間で揺れ動く作品や作る人を取り上げる面白さはあると思います。決して反目しているのではなく、お互いに干渉し合わない、目を向けないだけかもしれませんが、フリクションが起きない予定調和な世界に留まっていれば文化は更新されません。

今回の松田さんと黒木さんのお二人にこの問題提起を背負わせるつもりは全くありませんが、しかし2年前の企画がきっかけであったことを書き添えておこうと思いました。

天候が不安定だった会期前半から思えば、すっかり夏らしい日となり、庭の蝉の鳴き声も力強くなってきました。この夏の盛りもやがて終わり、儚く過ぎていきます。お二人の作品に記された「花の記憶」が、ひと夏の思い出とともに皆様のお手元で永遠に刻印されますことを祈っております。

この度はありがとうございました。

by sora_hikari | 2022-07-24 16:58 | 松田苑子・黒木紗世展

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