2022年 07月 23日
「松田苑子・黒木紗世 二人展 花の記憶」8日目-4
「松田苑子・黒木紗世 二人展 花の記憶」の8日目-4。
こちらは金沢市内の黒木紗世さんの仕事場の様子です。ここでは木地固め、下塗り、上塗りの「塗り」と、蒔絵、針描きの「加飾」の作業を行っています。木地は山中の木地師さんに依頼していることもあり、大掛かりな設備は必要ありませんが、幾重にも塗る漆器の工程と、机上で細密な絵に向かって、ひたすら描き込む集中した作業が続きます。
黒木さんは京都府亀岡市のご出身で、工芸専門の高校で漆芸を学び、大学は京都市立芸術大学の漆工科髹漆専攻、さらに金沢卯辰山工芸工房で研鑽を重ねました。ご両親ともに陶芸に携わるお仕事で、ご実兄も陶芸家、幼少期から工芸に囲まれた環境の中で育ちました。
高校や大学で漆芸の基礎を身に付けているとはいえ、ここ金沢おいて伝統的な漆芸の師にはつかず、漆器の意匠を自らの手によって創り出しています。今展のサブタイトルに用いた「花の記憶」とは、元々黒木さんの漆器のタイトルでもありました。当初より「植物の目線に立ち、花の短い生涯を取り巻く情景を「花の記憶」として漆で留めたい」と標榜する通り、「花」をテーマにした装飾ですが、いわゆる伝統的な吉祥文ではなく、植物のスケッチを重ねて、それを抽象化し、そのイメージを針を使って下書き無しで線描きしていくオリジナルの文様です。
黒木さんの漆器は装飾的でありながら、しとやかで奥ゆかしい上品さが魅力的です。ここ工芸立国・金沢で、伝統と現代性を併せもつ新たな窈窕たる漆器が生まれつつある。この進行形の黒木さんのお仕事に、これからも注目していきたいと思います。
黒木紗世 略歴
1989年 京都府生まれ
2008年 京都市立銅駝美術工芸高等学校 漆芸専攻卒業
2013年 京都市立芸術大学 漆工科髹漆専攻卒業
2016年 金沢卯辰山工芸工房 漆芸技術研修者修了
2022年 現在、金沢市内にて制作










by sora_hikari | 2022-07-23 20:00