2022年 07月 23日
「松田苑子・黒木紗世 二人展 花の記憶」8日目-3
「松田苑子・黒木紗世 二人展 花の記憶」の8日目-3。
京都の最南部に位置する綴喜郡井手町の松田苑子さんの仕事場の様子です。京都駅まで電車30分、奈良まで15分。小さな町ながら古都へのアクセスもよく、手仕事をするには集中できる環境です。天井高のある独立した建屋で、ガラス材料作り、石膏型作り、電気炉での焼成、研磨、マスキング、サンドブラストを行っています。作業工程ごとに整理された現場は、清々しく見えます。
多摩美でガラスを学び(2007~2011)、大学院は東京芸大へ(2011 - 2013)、その後金沢卯辰山(2013 - 2015)でガラスの箱作りに至りました。一旦多摩美に戻り助手として2年(2015-2018)を費やしますが、その後は作家としての活動を中心にしています。経歴をみると、いわばガラス工芸のエリートコースを歩んでいますが、不思議にもいわゆるアカデミックな保守系マーケットには依拠せず、実用との間を行き来する市井の現場で自らの作品を問いかけているスタンスがユニークな作家だと思います。
松田さんとの出会いは金沢卯辰山工芸工房に在籍中に東京で行われたアートフェアに、ガラスの立派な重箱を出品していた時でした。金沢の工芸マーケットを意識した作家は、どちらかと言うと美術工芸やオブジェなどに向かう方が多いように思いますが、松田さんの場合、実用と美術的要素が混在する「道具」を作っていることに新鮮さを覚えた記憶があります。現在も当時のような大型作品も作りますが、ほとんどが手の中に納まる小品が中心です。
何かを容れる「箱」という機能を有しながら、宝飾品のように所有することで得られる多幸感が、松田さんのガラスの箱の存在意義でしょう。白鳥のごとく、水面下で過酷な作業にあがきながら、水上で美しい姿に昇華され、展示会を通していろいろな方の思いに結び付いていくのです。
松田苑子 略歴
1986年 福岡県生まれ
2011年 多摩美術大学工芸学科ガラスプログラム卒業
2013年 東京藝術大学大学院修士課程ガラス造形修了
2015年 金沢卯辰山工芸工房修了
2022年 現在、京都府南部にて制作










by sora_hikari | 2022-07-23 18:00 | 松田苑子・黒木紗世展