2022年 07月 20日
「松田苑子・黒木紗世 二人展 花の記憶」5日目
「松田苑子・黒木紗世 二人展 花の記憶」の5日目。
「松田苑子・黒木紗世二人展」のオンラインストアは、7/20(水)20時から7/24(日)23時までご利用頂けます。尚、店頭でも同時販売しておりますので、先に売約済となる場合がございます。何卒ご了承ください。
写真は黒木紗世さんの盆と皿です。立体的な蓋物や酒器に比べて、平面的ゆえに絵画的な大胆な構図で描かれています。黒漆で仕上げた後に、絵を施す面に再度漆を塗り、それが乾かないうちに金属粉を蒔く、いわゆる「蒔絵」の技法です。
一般的な蒔絵では、金や銀など煌びやかな素材を使う場合が多いですが、黒木さんの場合は、渋い錫粉を用い、その面に針(縫い針)で細かな線描きを行う「針描き」という技法が特徴的です。漆が乾ききらないうちに一気に描かねばならないため、大皿になると食事もとらず連続8時間を要する集中力のいる仕事です。
また絵柄は、花や植物をモチーフにしていますが、具体的な花ではなく、黒木さんの思い描く仮想の世界で下書きもないまま、緻密な線描きを進めていきます。
黒木さんの制作拠点である金沢はかつて加賀藩に支えられた雅な工芸を伝統とするゆえ、漆器に於いても蒔絵・沈金・螺鈿など絢爛な装飾が施されたものを多く目にします。それに比べて黒木さんの漆器の装飾は、基本的に黒と錫色のツートンで構成され、メゾチントの版画のような世界を彷彿とさせます。
さらにこの皿や盆を見れば分かるように、古いピューターのように酸化し枯れた風合いを醸し出しています。煌びやかな蒔絵が「正の美」とするならば、黒木さんの退廃的な質感は「負の美」を取り入れた内省的な加飾表現と言えるでしょう。視覚的な線描の細やかさもさることながら、不可視な領域から湧き起こる心模様こそ、黒木さんの漆器の魅力ではないでしょうか。
写真順
#9 花薫 (大盆)Φ39.5/H2.0cm
#26 季の花 (中皿)Φ27.5/H3.0cm
#7 花影 (リム皿)Φ22.5/H3.0cm
#8 季の花 (大皿)Φ37.0/H6.0cm
#25 花を纏う (大皿)Φ30.0/H2.5cm
#19 水花角皿(乾漆皿)W18.0/13.5/H2.0cm












松田苑子・黒木紗世 二人展 花の記憶
2022年7月16日(土)~24日(日)
11:00~18:00 最終日は17時まで
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6
松田苑子 略歴
1986年 福岡県生まれ
2011年 多摩美術大学工芸学科ガラスプログラム卒業
2013年 東京藝術大学大学院修士課程ガラス造形修了
2015年 金沢卯辰山工芸工房修了
2022年 現在、京都府南部にて制作
黒木紗世 略歴
1989年 京都府生まれ
2008年 京都市立銅駝美術工芸高等学校 漆芸専攻卒業
2013年 京都市立芸術大学 漆工科髹漆専攻卒業
2016年 金沢卯辰山工芸工房 漆芸技術研修者修了
2022年 現在、金沢市内にて制作

by sora_hikari | 2022-07-20 18:45 | 松田苑子・黒木紗世展