「藤田佳三展 黄泉の豊穣」ありがとうございました

藤田佳三展 黄泉の豊穣」は本日終了しました。会期中ご来店下さいました方、オンラインストアでお選び頂きました方、皆様に厚く御礼申し上げます。尚、オンラインストアは本日6/12 23時までご利用頂けますので、お見逃しの方はどうぞご覧ください。

写真は今展初出品の鉄彩家屋(侍女)、鉄彩望塔、鉄彩三彩明器舗です。古い時代の中国で墳墓に一緒に埋葬された明器を模しています。当時、死後の世界も生前同様に豊かであるようにとの思いで作られたものですが、その意図の純粋さと、ミニチュアな陶の世界観に魅了されて藤田さんが今展のために特別に製作したものです。

明器は兵馬俑のような大掛かりなものもありますが、一般的には牛、羊、楼閣、家屋、農舎、水田、貯水池、倉、竈(かまど)、井戸、家畜小屋、雑技俑など日常の生活で関わりのあったものが幅広く作られました。当時の焼成温度は現在ほど高くはありませんでしたが、土中に埋めても朽ちることのない焼き物がその「祈り」の役割を担った事実は、現代の作り手にとって感化されるのでしょう。

「うつわ」は日常の道具ですが、それを使う行為は、食べることと命を繋ぐ儀式でもあると考えると、陶芸家の作るうつわには、自ずとその意識が織り込まれているのかもしれません。

今回、会期後半に来て下さったお客様が染付の振出を選んでくださいました。振出は干菓子を入れる茶道具ですから、茶箱にお入れになるのかお尋ねしたところ、そうではなく、最近亡くしたご遺族の遺灰を入れるとのことでした(掲載のご許可を頂いております)。ずっと容れ物を探していたところ、ようやく思いが叶ったと。今回の明器に関連づけて「焼き物」と「祈り」の関連性をDMで書きましたが、そんな上辺だけの説明を超えて、実際にそのようにお使い頂けることに感銘を受けました。「うつわ」は「虚ろ」ゆえに、そこに込める思いは人それぞれであり、確かにそういう役割を担えるのだと。

今回お選び下さいました藤田佳三さんの「うつわ」が心豊かな道具として、皆様のお暮しと共に末永くご愛用頂けますことを心より祈っております。この度はありがとうございました。

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by sora_hikari | 2022-06-12 17:00 | 藤田佳三展2022

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