2022年 03月 27日
「山本亮平・平倉ゆき展 白瓷のアティチュード」ありがとうございました
写真は山本亮平さん、平倉ゆきさんご夫妻の近影。そして山本さんご自宅近くの小物成窯跡の物原(ものはら)の様子と、有田の磁器原料の採掘していた泉山陶石場です。
2014年以来、今回が4回目となる山本さんご夫妻の展示会でしたが、その都度の変遷を見るにあたり、「静かなる抵抗」が底流にあるように感じています。
当初は有田で磁器生産が始まって間もない頃(江戸初期)の質感をどう再現できるかという技術的、歴史的な探求であったと思います。その後、染付の新たな解釈、自作の土窯による磁器再生を経て、当時の素材や焼成方法に添う方法論がある程度確立して臨んだのが今回であった訳ですが、その方向の選択に「静かなる抵抗」を感じたのです。
山本さんから「抵抗」という程の強い言動はありませんが、しかし古典再現に準ずる既存マーケットへの違和感、つまり「しっくりこない何か」を常に製作の中で自問自答しているように思うのです。一般的に古典に根差す陶芸家が至上のものとする茶陶に対しても、自分なりの納得、腑に落ちる感覚が掴めるようになってから向き合いたいと考えているようです。
すでに「写し」を超えて、当時のままの質感を再現できているように思うのですが、敢えて名品写しのような方向を選ばない。その風合いを持って現代的にどう解釈し得るのか。それを奇異な造形ではなく、あくまで抑制的な表現で歴史のトンネルを通して、今の生活にタイムスリップさせる。これが山本さん達による古典という骨格を踏まえたうえでの新たな表現なのだと思います。
モノ派を代表する李禹煥(リ・ウーファン)さんの講演を聞きに行ったことがあるのですが、あれだけ余白のある静かな表現をしているにも関わらず、若い頃は時代と闘ってきたという話を聞き、既成価値への抵抗とは、激しく壊す表現のみならず、内に秘めた静かな選択もまた革新的であることなのだと思うことがありましたが、その経験は山本さん達の今のお仕事の意識と重ったのでした。
今展は、白瓷への態度(アティチュード)と銘打ったのですが、むしろ時代に向けた態度をどう見たか、そこが一番の興味でした。僅かでもこの感覚が共有できたなら、嬉しく思います。
この度はありがとうございました。
by sora_hikari | 2022-03-27 17:51 | 山本亮平・平倉ゆき展