2022年 03月 14日
「山本亮平・平倉ゆき展 白瓷のアティチュード」開催のご案内
3月19日(土)から3月27日(日)まで開催する「山本亮平・平倉ゆき展 白瓷のアティチュード」のご案内です。
佐賀県有田町の山本亮平さんと平倉ゆきさんご夫妻の家の近くには約400年前(江戸初期)に磁器が焼かれた古い窯跡(小物成窯や天神森窯)があります。そこでは陶器から磁器に移行する転換期の初期伊万里と言われる白瓷が焼かれていました。山本さん達は独立当初は、クラフト向きの白い器を製作していましたが、やがて導かれるように古い陶片を頼りに当時の磁器の再現に取り組むようになりました。それは素材となる石探しから始まり、土づくり、釉薬、ろくろ、絵付け、そして薪窯焼成など一貫して時代を遡る手間のかかる方法でした。数年前に自作の土窯(耐火煉瓦ではない)を作り、今も古典に倣った焼成を重ねています。その窯で焼かれた器は当時の質感に迫る風合いで多くの人の高い評価を得ています。
しかし山本さん達の終着点は古典の再現にあるのではなく、写しが写しでなくなるまで解放されることにあります。「土窯は焼成中に、生き物のように膨らみ縮み、傷ついて剥がれたりと様々なことが起こりますが、そんな状態に従ってついていくと自分の意識外の自然なものが焼ける気がします。そこで今回は窯以外にも様々な状況を受け入れることから始めています。現在のこの世に素直に反応して、好きな時代の古陶磁の技術で今必要なものを作ります。」とは山本さんからの言葉です。抄訳するなら今の方法を用いれば、特別のことをしなくとも、古典相応の焼きが得られる段階まで来ているということでしょう。そのうえで、今の暮らしに活かせるものをこの方法をもって臨むのだという姿勢です。
さてここでひとつの疑問が生まれます。今回のDM撮影用に届いた中で碗や鉢やポットはいいとしても、なぜアルコールランプや漏斗、そして陶貨なのか?もちろん山本さんなりの理由はあるのです。中国茶を飲むために必要な道具だったり、戦時中に金属不足の代用として作られた陶製の貨幣への興味など個人的な製作意図はしっかりあります。しかし疑問の焦点はそこではありません。これだけ古典的な風合いを何年もかけて再現しながら、茶陶や酒器になぜ向かわないのか。発表の場もそちらに目を向けないのか。土窯もようやく作り、焼成も重ねて実績も出来てきた。この回り道の苦労を価格に転嫁し易いアイテムがあるではないか。さていよいよこれからと思った矢先に。
いやいや、もちろん茶碗も酒器も作っているのです。しかしそこを中心に据えていこうとしない姿勢への疑問なのです。本来古典を追及する焼き物の先にあるのは、よりハイソなマーケット向きのアイテムと思うのですが、山本さんの関心はあくまで、この質感をもって今自分が必要なものや美しいと思うものであって、決して市場におもねない清らかな思想の持ち主なのです。この無欲な態度に感心すると共に、それを寛容に大きく包み込む奥様の献身ぶり(あくまで想像)に、つい落涙してしまうのです。
いやいや、店側の勝手な思い込みでしかないのですが、こういう純粋なアーチスト志向が作品の出来云々を超えて、作り手の姿勢として頭が下がる思いなのです。古典的な白瓷に転向したばかりの頃からのお付き合いで、第4回目となります。さて、今回はどのような白瓷へのアティチュード(姿勢)が見られるでしょうか。もうこうなれば、ぜひ思うままに突き進んで欲しいと願うばかりです。 どうぞご高覧ください。店主
山本亮平・平倉ゆき展 白瓷のアティチュード
2022年3月19日(土)~27日(日)
11時~18時 最終日は17時迄
作家在廊日 3月19日
ギャラリーうつわノート 埼玉県川越市小仙波町1-7-6
山本亮平
1972年 東京都生まれ
1998年 多摩美術大学油絵科卒業
2000年 佐賀有田窯業大学短期修了
2022年 佐賀県有田町にて制作
平倉ゆき
1978年 長崎県生まれ
2000年 佐賀有田窯業大学短期修了
2001年 絵付師として3年間活動
2022年 佐賀県有田町にて制作
by sora_hikari | 2022-03-14 18:00 | 山本亮平・平倉ゆき展