2022年 01月 23日
「福島誠・四海大 二人展 益子の息吹」ありがとうございました
「福島誠・四海大 二人展 益子の息吹」は本日終了しました。会期中にご来店下さいました方、オンラインストアを通じてお選び下さいました方、皆様に厚く御礼申し上げます。(オンラインストアは本日1/23 23時までご利用頂けます)
関東の商業圏に最も近い陶芸産地である益子は、春秋年2回開催される陶器市の集客に恵まれ、またマスコミも取材し易いゆえにメディアへの露出も多く、関東の方のファーストステップとして益子焼を選ぶ機会も多いと思います。80年代のバブル期までは作れば売れる時代を経験し、その後のバブル崩壊やリーマンショック以降に日本経済が冷える中、地元に頼らず市場の需要に合わせたカジュアルな器が広がっていったように記憶しています。今は形を変えSNSを通じた新たなうつわブームがあり、それに準ずる流れが益子(に限らず)にも興っています。
左側:四海大さん、右側:福島誠さん
このような中、益子に於いて福島さんや四海さんのような土を掘り薪窯焼成による手間のかかる焼き物づくりは不器用な選択に思えます。益子であればもっと市場に合わせた効率のよい方法はあるはずです。また備前、信楽、伊賀、美濃、唐津など桃山陶に準ずる茶陶の流れを汲む産地であれば、古陶に近づくために土や焼きに拘る方も多く、またそれを支える特殊なマーケットも存在します。しかし益子を始めとする新たな「焼き物」の解釈は、旧来的な焼き物好きの支持者は少なく、その価値を受け入れる顧客の絶対数の不足があり、ゆえに苦労の多い製作方法にも関わらず価格転嫁することも難しく、結果的にここは苦労と結果が経済的に結びつきづらい状況であったと思います。
しかしここ数年でしょうか。現在のうつわブームとはまた違った「焼き物」を志す若い作り手が増えてきたように思います。従来の茶陶とも違い、あらためて土を焼くことで起こる現象に目を向けた作り手たちです。土や釉薬、焼成方法のセオリーも従来の方法論に頼らずに、型を崩して「焼き物」を再解釈しようとする流れです。この新たな動向(もしくは揺り戻し)が同時多発的に全国にあり、この益子にも興っている事象を捉えてみようと思ったことが、今回の展示会の動機でもありました。
もちろん従来から取り組んでいた福島さんと、まだ新人の四海さんとの起点も意識も異なると思います。この二人に限らず、益子には他にも同様の作り手がいますが、皆一様に括られたくないという思いもあるかもしれません。しかし福島さんと四海さんがここで交錯した。益子の市場の力学から離れて、土を焼いて得られる普遍的な現象に目を向けた作り手が重なり合った。例え独善的解釈であっても、これを益子の新たな息吹として捉えてみたいのです。
by sora_hikari | 2022-01-23 19:05 | 福島誠・四海大二人展