2021年 12月 20日
「岡崎真奈美展 布伝説」3日目


布つくりは世界中を見渡しても古代から女性の仕事として母から娘へと継承されてきました。それは食事の準備と同じ家族のための衣服の用意です。素材を整え糸から衣になるまでの工程と手間は、食べるものを調達することよりも時間を必要としたかもしれません。
布つくりが女性の手で行われてきた理由としては、作業に特に危険な道具はなく程よく安全で、家で出来る糸紡ぎ、機織りは途中で比較的簡単に手を止め、また続けることも可能です。それは出産や育児のあいだにも仕事を両立できることを意味します。
経糸に緯糸が打ち込まれ細い糸が時間の経過とともに一段一段と布に仕上がっていく変化の状態は、妊娠から出産までの新しい命の誕生と引き合わせて語られることもあります。また“紡ぐ”織る”の表現には紡がれ織りなされる人生の道のりが、“結ぶ”“繋ぐ”などの他の糸編の字も人と人の関係を取り持つ言葉としてよく用いられます。
教理を広めること、特に宗教を一般的に広め伝えることを意味する「布教」という言葉にも布の字が当てられています。女性たちの布つくりは、畑仕事、家事や子育てなどの日々の生活の中で行われ、一枚の布、一枚の衣が形になるまでには途方もない時間がかかり、そこには女性たちの家族を思う気持ちや願い祈りが込められています。素晴らしい伝統染織を保有しながらも文字を持たない民族の記憶や伝説は模様になり語り継がれてきたのです。
織り、染め、刺繍などのあらゆる染織技術を持ち、それらを組み合わせ独自の民族衣装を発展させてきた中国少数民族、一枚の布をからだに巻き付け着用することを衣の文化とする大陸東南アジアと島嶼国家インドネシアなど、外部や時代の影響を受けながらも守られてきた民族の布をご紹介します。
民族の、家族の、女性たちの「布伝説」。布に触れながら布につながるすべての感覚をひろげて、想像の階段を皆さんと一緒に“うつわノート”で駆けのぼれることを楽しみにしています。
ティモールテキスタイル
岡崎真奈美
写真
インドネシア 西ティモールア マヌバン地方 アトニ人
原始機で経紋織の織物を織っている写真(1999年撮影 岡崎真奈美)
岡崎真奈美展 布伝説
Manami Okazaki The Legend of Old Textile
2021年12月18日(土)~26日(日)
営業時間11時~18時
最終日は17時迄
全日在廊(平日は12:30~17:00迄)
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6
岡崎真奈美プロフィール
北海道生まれ
文化服装学院でデザインを学び、アパレルの仕事に就く。その後、東南アジアの旅を経てティモールを中心にした民族布を扱う仕事を始める。現在東京を拠点に、全国各地のギャラリーで「ティモールテキスタイル」を屋号に民族布や古物の展示会を行っている。

by sora_hikari | 2021-12-20 18:22 | 岡崎真奈美展