2021年 11月 14日
「石黒剛一郎展 麗しき青磁」ありがとうございました
「石黒剛一郎展 麗しき青磁」は本日終了しました。会期中にご来店下さいました方、オンラインストアでお選び下さいました方、皆様に厚く御礼申し上げます。
写真は岐阜県多治見市の市之倉にある石黒剛一郎さんの工房です。市之倉は幸兵衛窯、市之倉さかづき美術館などの観光スポットがあり、また窯業地として新旧の窯元が集まるエリアです。
普段は日常向けのうつわを中心に作っている石黒さんですが、今展ではその原点にあたる宋代中国古陶磁を中心に再現して頂きました。品格のある青磁と日常を繋ぐバランスのとれた展示内容であったと思います。
平成時代に広まった暮らし向きのうつわは、従来の「陶芸家」が求めた縦軸(歴史や技巧)から解放され、生活という横軸(暮らし方、衣服、料理、音楽など)の中でその時代の価値を映してきました。今はSNSを通じて、その傾向がさらに強まる中、あらためてその原点となる古典を、日頃生活食器を作っている石黒さんにチャレンジして頂くというのが今展の主旨でした。
現在のように拡散していく「うつわ」の流れに伴い歴史性が曖昧になる中、あらためてその骨格を再確認すると共に、美術工芸と生活工芸に分離した流通と顧客の意識を接続したいという思いがありました。もちろん生活食器側から見れば未だに敷居が高く、また美術工芸側から見ればその基準に満たないのかもしれません。
生活と美術。実用と鑑賞。両分野は交じり合わない距離がいまだにあるように思いますが、しかしその間には線引きする必要のない豊かな河が流れているように思うのです。今回の石黒さんの青磁の在り方は、そこを橋渡してくれると信じています。
今回店内で流したのは作曲家・吉松隆さんとピアニスト田部京子さんによる「プレイアデス舞曲集」や「Pianissimo」。吉松さんは、現代音楽の非音楽的な傾向に異を唱え、調性やメロディを復活させた「新(世紀末)抒情主義」を唱えている方。田部さんは国際コンクールで輝かしい評価を得ている方。確かな技術を備えながら、決して誇張的でなく日常の中で気持ちが潤うピアノ曲です。今はどの分野もプロとアマチュアの区別がつきづらい時代ですが、しっかりとした背景から滲み出る気品を見極めていきたいと思います。
どうぞこれからも石黒剛一郎さんのお仕事にご注目ください。この度はありがとうございました。
by sora_hikari | 2021-11-14 17:00 | 石黒剛一郎展