「東亨展 素材側から」4日目-2

東亨展 素材側から」の4日目-2。

東亨(あずま・りょう)さんの「燧具(ひうちぐ)」と呼ばれる作品。主に自然石が中心ですが、未加工の金属片やガラス素材もあります。

「燧具(ひうちぐ)」という言葉は、時代劇などに出てくる厄除けの「火打ち石」と同じ意味合いで東さんは用いています。日頃、丹波の河原で作業する際に、金属の当がね代わりに使っている自然石が、時に鎚を打つことで火花を散らす経験から、石は人の使われ方によって別の存在になるという彼なりの「発見」に基づいています。火打ち石による火花は、身を清めるまじないや魔除けになる信仰的な意味があるそうですが、そのような人の思いと素材の関係性に面白さを感じたことが、この「燧具(ひうちぐ)」を作品とする動機です。

分かり易く言えば、茶席の見立てのような存在ですが、東さんの意識は少し違うところにあります。例えば、人類が石器を使い始めたのが260万年前(火の使用以前)と言いますから、人類が人類になる前からの関係になるのです。その動機は石がそこにあったからなのか、道具としてあるいは武器として使う目的が先にあったのか、知る由はありませんが、石という「素材」に呼ばれるように関係が生まれたことは確かでしょう。東さんは「素材」から発せられる人の造形意識の原初を「燧具」によって提示するのです。

東さんの「燧具(ひうちぐ)」のユニークな点は、それらを希少な鑑賞石とは違う視点で捉えていることです。芸術品として祀り上げるのではなく、それは「漬物石」のような存在に近く、人の使われ方によって石の意味が変容し、日常空間に朴訥に置かれている様子、「素材」のもつ二面性にこそ、彼の言う「燧具」の真骨頂であるようです。

しかしながら、ここに並ぶ写真を見ていると、彼の「てっかり」に見られる造形感覚と重なることにも気づくことでしょう。ひとつは金属的な要素を含んでいること。加工された金属はやがて朽ちて、自然に戻ろうとする、また石は鉱物を含み加工された金属になる相関関係。もうひとつは「てっかり」との形状の類似と相違。一方は板状のものを加工したペラペラな「虚ろ」な感覚、もう一方は地殻で圧せられた塊としての「重厚」な感覚。この造形としての対比が、東さんの眼を表していると思います。

「モノ」を見るのに無理に概念を先立たせるべきではないのだと思いますが、この「燧具」をなんとかして解釈したいと試みたいと考えました。さて、東さんの心情は如何にあるのか。つげ義春の無能シリーズの一編「石を売る」の境地か、あるいは新手の錬金術師なのか、答えはなかなか出てきません。

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東亨展 素材側から

2021925日(土)~103日(日) 

営業時間 11時~18時 

最終日は17時迄

ギャラリーうつわノート 

埼玉県川越市小仙波町1-7-6


東 亨(あずま・りょう)プロフィール

1988年 三重県生まれ

2011年 大阪芸術大学 金属工芸コース修了

2011~14年 同大学にて助手

2015年~ 社会福祉法人に勤務

2021年 現在、大阪府堺市在住 近隣の公園や河原でで製作


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by sora_hikari | 2021-09-28 18:03 | 東亨展2021

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