「安永頼山 茶盌展」5日目

安永頼山 茶盌展」の5日目。

「絵唐津」もまた唐津焼を代表する作風です。一般的には鬼板(おにいた)と呼ばれる鉄絵具で芦や草花、唐草の文様を描き、長石釉や土灰釉などの透明の釉薬を上から薄くかけて焼いたものを指します。古唐津の初期(波多氏時代)には藁灰釉の斑唐津や朝鮮唐津が先行して作られますが、後年(鍋島氏時代:慶長年間)になって朝鮮陶工によって作られ始めたと言われます。その流れの縦軸には朝鮮陶磁のルーツがあり、また同時期の横軸には美濃陶(織部や志野)のマーケットの影響があるようです。茶碗の概念的な美と共に、時代に相応した市場原理から読み解くのも面白いです。

これを現代に置き換えた時に、茶碗の需要は、茶陶系の数寄者が中核にはあろうかと思いますが、弊店のような門外漢の立場から望むべくは、手に収まる美術と実用の混ざり合う日本らしい美の核にあるものとして、特定の市場を超えてより自由に造形美(彫刻やオブジェのごとく)を楽しんで頂きたいと思っております。

さて安永頼山さんの絵唐津ですが、ご覧の通り老僧のような、あるいは風雨に晒された石仏のような積年の風合いを想起させる枯れ具合が見所でしょう。絵を描いているにも関わらず、くぐもった釉調に華やかさはなく簡素で寂しい。鼠色に赤みを帯びた色と質は無愛想ながら、手に持つことで一層の愛着に変わる自虐的転換。これを窯出し後に、特別な古色を施さずにこの味を出すということですから、土、釉薬、そして焼成の段階で工夫を折り重ねた頼山さんの熟達の域だと思います。何よりこうありたいとイメージして取り組むこと、結果を見据えた「眼」が大切なのは言うまでもありません。

5)絵唐津茶盌  W13.2  H8.2 cm

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本田麻仙さんによるお茶席は最終のご案内となります。
10/10(土)  ×13:00 〇14:30 △16:00
おひとり様一席 千円
ご希望の日時をメールでお知らせください
utsuwanote@gmail.com
希望日時、お名前、人数、連絡先

安永頼山 茶盌展
2020年10月3日(土)~11日(日)会期中無休
営業時間 11時~18時 
ギャラリーうつわノート 
埼玉県川越市小仙波町1-7-6

陶歴
1970年 島根県益田市生まれ
2001年 田中佐次郎氏に師事
2003年 藤ノ木土平氏に師事
2008年 登り窯を築窯し独立
2013年 田中佐次郎氏命名の「頼山」に改名
2020年 現在、佐賀県唐津市北波多にて制作

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by sora_hikari | 2020-10-07 17:56 | 安永頼山展

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