2020年 07月 26日
「渡辺林平・渡邊心平展」ありがとうございました。
「渡辺林平・渡邊心平展 立役と女形」は本日終了しました。長雨の続く中、またコロナ禍が心配される中、ご来店下さいました皆様に厚く御礼申し上げます。
現代の作家が古典に取り組むことに意味があるのか。高度な再現に達したとしても、本歌を超えることはできない、という考え方然り。古典を知ることは、型を知ることである。型を破るなら、まず古典を知れ、という考え方も然り。古典など知らなくとも独自の表現が出来る現在ですが、しかし時代の手のひらの上にいることもまた事実です。
今は、産地にいて定説となった古典様式をあらためて原理から捉え直す動きもあれば、産地に捉われず古典をデザインとして引用することもあります。多様な表現がある時代ですから、焼き物の歴史と分断されていても、何ら支障はないのが現実ですが、しかしその源流を認識することには一定の意味があると思っています。
今回のお二人は、備前や伊万里といった歴史を意識し易い産地の作家です。参照できる歴史や技法があることは恵まれていると言えるでしょう。それを踏まえた上で、その価値観をそのまま踏襲するのか、あるいは脱却するのか、二者択一だけでなく、その中間に多様な解釈が出来ます。それを個々の作家がどう選択しているかを垣間見るのは興味深いことです。
古典とされるバッハの「ゴルトベルク変奏曲」を、グレングールドの再解釈で新たな表現が生まれるように、その人の奏で方によってどう古典が更新されるのか。それを目の当たりに出来るのは、今を生きる我々の贅沢だと思うのです。
この度お持ち帰り頂きましたお二人の器が、古典と現在の食卓を繋ぐタイムマシーンになりますように願っております。この度はありがとうございます。これからもお二人の活動にご注目ください。
写真は、初日在廊の渡辺林平さん
by sora_hikari | 2020-07-26 17:58 | 渡辺林平・渡邊心平展