「山本亮平・ゆき展 古典のミニマリズム」開催のお知らせ

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3月21日(土)から29日(日)に開催する「山本亮平・ゆき展 古典のミニマリズム」のご案内です。

美大で油絵を学び、有田窯業大学で陶芸を学ぶ。デビュー当初の白錫釉を纏った柔らかな型打ちのうつわは、生活工芸の流れと共に多くの評価を得たが、やがてその立場を捨て、有田固有の素材から取り組み直し、初源伊万里と呼ばれる作風に移行した。最初の頃は数は採れず、それを受け入れる発表の場も少なかった。しかし地道な積み上げと風合いの良さによって、あらたな賞賛を各方面で獲得している。古典再現にあたって、友人の窯で焼成を繰り返してきたが、もう何年も前から自身の薪窯構想はあり、土地探しから始まり、敷地の伐採と整地、窯床の穴掘り、隔壁の煉瓦造り、土台から窯本体の積み上げまで、昨年末にようやく形が完成した。それは唐津の古典的な割り竹式の土窯で、なにもそこまで苦労せずとも現代的な選択があったと思うが、それを受け入れず、古式に倣ってこれを実現した。

さて、山本亮平の取り組む約400年前の唐津と伊万里の移行期にあるグレーゾーン(仮に初源伊万里と言う)を捉えた焼き物であるが、元は工房近くにある有田焼初期の小物成窯跡の陶片の質感に近づくことから始まった。しかし形は写せても従来使っていた粘土やガス窯では古陶の土味は再現できない。しかしその頃に出会った唐津の作家(梶原靖元氏や矢野直人氏)の指導と影響を受け、あらためて原料探しや土造りを原点から見直し、愚直に素材に向き合うことで、徐々にその距離は縮まっていった。やがてそれは古陶磁ファンにも認められる質感をもたらし、現在の評価を得ている。

しかし山本の求めるものは、それが答えではない。古典の忠実な写しが目的ではなく、当時の自然素材と焼成方法によって得られる風合いが肝心なのだ。まずは古典に倣い、そして自身による抽象化を図る。それは古典を昇華させた焼き物のミニマリズムと言えばいいだろう。誇張した見所を作らず、染付においては消え入らんばかりの儚さである。振幅の狭い中から湧きおこってくる感情は、抒情詩のように内省的で淡い心の揺らぎを映すのだ。古陶磁に近づこうとすると、過去の既成価値の追認に留まることも多く見受けられるが、山本の場合、それを良しとせず、古典的方法に立脚しながらも、抽象絵画を描く意識と同様に現代における新たな表現なのである。それは今展に向けた山本自身の言葉に如実に表れている。

「今回は写しとその先の抽象化をテーマにして、400年前の土の窯を写すところから始めています。写しとは簡単に言えば過去の模倣ですが、自分にとって写しが写しでなくなるところまで、抽象化がおきなければならないと思うようになりました。私にとって唐津や初期の伊万里の真髄は自然との合意の実現であって、土の窯はそれを促す装置のような気がします。表面の模倣ではなくて自然との合意を実現できるか、実際に作って焼いて確かめたいのです。」

今回も亮平氏がろくろを主に、奥様ゆき氏が絵筆をとっている。新しい薪窯は、字名をとって竈ノ元窯(かまどのもとかま) と命名した。さあ長い道のりを経て、ようやく初窯で自分達のうつわを焼く段階になった。今展ではその成果が見れられる予定である(しかし保証は無い)。3月21日が楽しみなのだ。店主

山本亮平
1972年 東京都生まれ
1998年 多摩美術大学油絵科卒業
2000年 佐賀有田窯業大学短期修了
2020年 佐賀県有田町にて制作

山本ゆき
1978年 長崎県生まれ
2000年 佐賀有田窯業大学短期修了
2020年 佐賀県有田町にて制作


山本亮平・ゆき展 古典のミニマリズム
2020年3月21日(土)~29日(日) 会期中無休
作家在廊日 3月21日(土)
ギャラリーうつわノート 埼玉県川越市小仙波町1-7-6 地図

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by sora_hikari | 2020-03-16 18:00 | 山本亮平・ゆき2020

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