「石黒剛一郎・日高伸治・高木剛 三人展」5日目

石黒剛一郎・日高伸治・高木剛 三人展」の5日目です。

石黒剛一郎 作

水仙盆
青瓷輪花碗
青瓷洗
青瓷盤
青磁長頸瓶(大)
青磁長頸瓶(小)

青磁の最高峰と言われる北宋汝窯(じょよう)の水仙盆に倣った作品をはじめとする青磁。汝窯青磁水仙盆は世界に6点(台北故宮博物館4点、大阪東洋陶磁美術館1点、中国吉林省博物院1点)しかなく、そのうちの5点が一堂に会した2017年の展覧会は記憶に新しいところです。「雨過天晴 雲破処」雨上がりの雲の間からのぞく空の青を意味し、天青色(てんせいしょく)と呼ばれる淡い青色は、皇帝を魅了しひと際品格の高い存在でした。

青磁を語り始めると斯様に、歴史な伝承や学術的な知識を背景に、つい教条的な説明に成りがちです。書く側も間違っていけないと、つい肩肘が張る。特に浅学かつ付け焼刃で説明しようとすると、どこかでコピペしたままの情報になってしまいます(自分)。しかしこれでは、知っている事が良いのか、見て楽しんでいるのか、分からなくなる。知識を尊重するのはもちろんですが、それを先行させると敷居が高くなり、多くの人を阻んでしまいがちです。

生活工芸が広がってから久しく、青磁の良さは特殊領域に限られているように思います。もちろん青磁で日常食器を日頃から作る石黒さんはじめたくさんの作家さんはいると思いますが、その歴史的原点に基づく作家群とは大きな距離があると思います。

今回はこの距離を縮めて、もっと素直に青磁に接して欲しいと願っています。淡く清涼な青は心を洗うような美しさです。歴史に基づく形は、凛として人の気持ちを引き締めます。普段から日常食器を作っている石黒さんだからこそ、この古典的な青磁に取り組むことに意味があるのです。意味も価格帯も敷居を下げ、予備知識なく接することが出来るはずです。

本日から店内で流しているのは作曲家・吉松隆さんとピアニスト田部京子さんによる「プレイアデス舞曲集」や「Pianissimo」。吉松さんは、現代音楽の非音楽的な傾向に異を唱え、調性やメロディを復活させた「新(世紀末)抒情主義」を唱えている方。田部さんは国際コンクールで輝かしい評価を得ている方。しかし確かな技巧を備えながら、決して誇張的でなく日常の中で気持ちが潤うピアノ曲です。

生活工芸と美術工芸。実用工芸と鑑賞工芸。両分野は交じり合わない距離がいまだにあるように思いますが、しかしその間には、線引きする必要のない豊かな河が流れているように思うのです。今回の青磁、ベトナム陶磁、朝鮮陶磁の在り方は、そこを繋ぐヒントをもたらしてくれると信じています。

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石黒剛一郎・日高伸治・高木剛 三人展 
中国・安南・朝鮮 古陶磁アンソロジー
2020年 1月25日(土)~2月2日(日)会期中無休
営業時間 11時~18時 
最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート 埼玉県川越市小仙波町1-7-6 地図

石黒剛一郎
1977年 愛知県生まれ
2000年 東京電機大学物質工学修了
2005年 瀬戸窯業高校陶芸科 修了
2008年 瀬戸市にて独立
2020年 現在岐阜県多治見市在住

日高伸治
1972年 愛知県豊田市生まれ
1997年 東京芸大大学院油画修了
2011年 愛知県立窯業高等技術校修了
2011年 岐阜県瑞浪市にて独立
2020 年 現在岡山県備前市在住

高木剛
1978年 鹿児島県生まれ
1998年 山梨県で陶芸を学ぶ
2002年 東京江東区でにて制作を始める
2012年 韓国青松白磁窯にて研修
2020年 現在京都市右京区在住

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by sora_hikari | 2020-01-29 14:06 | 石黒剛一郎・日高伸治・高木剛展

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