「東 亨 展 ペルーへの手紙」8日目

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東 亨 展 ペルーへの手紙」の会期は明日1/19(日曜)の17時で終了します。

今は古道具坂田さんの美意識の延長上にあるアートピースを作る作家は多いと思います。前衛陶芸や美術工芸の領域とは一線を画し、生活道具の延長上に置かれるオブジェです。そのほとんどは抽象的な造形で、技巧や表現を主張するよりも、空間に同化するような佇まいをしています。それは環境音楽的と言いましょうか、そこに在りながら「なんでもない感」を表している(矛盾してますが)ものが多いように思います。それらの在り様は心地良くもあるけれど、今や時代との予定調和(ありがち)な印象も伴います。

東亨さんが作る「てっかり」と呼ぶ廃材オブジェも、俯瞰して見れば暮らしのアートピースの傍流にあたると思います。多くが見立てに近いアプローチです。しかし今回面白いのは、そんな東さんが古代ペルーの民俗遺物に触発された作品を発表したことです。これらの作品は2018年に弊店で個展を行った際に既に構想としてご自身が持っていたものでした。2年前にその話を聞いた際に「てっかり」のオブジェ然とした様相とのギャップに多少なりの驚きがあった訳ですが、自分の中の価値観を一旦ずらしてみたいという思いなのかと納得もしました。

東さんの中でペルー、南米の古代文明に対する関心は中学生の頃からあったそうですから、決して戦略的な思いでこれに取り組んだ訳ではないと思いますが、しかしここで何故そこを具現化するかについては、やはり時代との相対化を図ろうという心理も働いているように邪推しています。当時は尖鋭的であった価値が、やがて広まり一般化すると、もの作りをする人はそこから離れていく傾向があると思います。東さんが、あまり一般に知られていない古代ペルーの造形物に触発され、その引用をもって今の時代に提示しようとするものは何なのか。そこが今展の問い掛けであろうと思います。

ひと頃(例:生活工芸時代)、廃絶した自己表現や土着性が、いま再び各所、各作家から沸き起こっているのは面白い現象だと思います。それも皆んな若い人が伝統や古典をあらためて捉え直そうとする動きも散見されます。そこには作家自身が自覚しなくとも時代の鏡のように、そうなる「意味」が浮かび上がってきます。経済的にも社会的にも将来が不安定な時代だからこそ、深層に響く「象徴性」を造形物に求めようとする動向は、作り手の意識として必然性があるように思います。それが過去の美術分野と異なるのは、多くが顧客を個人対象とし、生活の延長上にあり、極めて限定的な個人アイコンを探し求めていることではないでしょうか。

上記は東さんの活動をミスリードし兼ねない考え方ですが、時代に迎合しない態度から生まれるもの、まだ見えぬ地平の先にあるものを、少し背伸びして見てみたい、そんな展覧会だと思います。事実、ご来店されるお客様も、まだ未定義なこれらの作品を固定観念なく受け入れようとする目の澄んだ方が多いのも特徴でしょう。今回の不思議感、異物感、抜け感のかっこ良さを伝えるには甚だ役不足ですが、わずかでもこの面白さが伝わればと思っております。会期はあと1日。夕方には東さんが搬出で再度ギャラリーに来る予定です。

写真は巻き貝。元はサバ缶。売約済み。錬金術師?いや坂田さん的かな、と思います。

東 亨 展 ペルーへの手紙
2020年1月11日(土)~19日(日)
営業時間 11時~18時 
最終日は17時まで
ギャラリーうつわノート 埼玉県川越市小仙波町1-7-6 地図

プロフィール
1988年   三重県生まれ
2011年   大阪芸術大学金属工芸コース修了
2011~14年 同大学にて助手
2015年~  社会福祉法人に勤務
2020年   現在、大阪府堺市在住

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by sora_hikari | 2020-01-18 17:33 | 東亨2020

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